2012年のベスト企業家にTSMCの張忠謀会長

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~81歳にして フォーブス・アジア誌~
 台湾の半導体生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の張忠謀会長が米誌・フォーブス・アジア版(12月10日発行)の2012年ベスト企業家に選ばれた。張会長は2009年に78歳という高齢で同社の代表取締役会長としてTSMC社に復帰。現在81歳でTSMCのトップに立っている。ニューヨーク証券取引所で株価の大幅増により黒字を生み出し、さらに株価も10年振りに高値を更新するなど、様々な“神業”を成し遂げるなど辣腕をふるっている。業績の引き上げに貢献した事、半導体業界の変革に対する評価増がベスト企業家に選出された要因と見られる。
 TSMC社は半導体チップのOEM(相手先ブランド製造)製造業として創業、1990年には急成長を迎えた。張会長は2005年に74歳で一度は引退し、その後同社の業績が低迷していた。受注価格の大幅なダンピングをせざるを得ない状況に陥ってしまい金融危機が発生。リストラされた社員らが張会長の自宅の門のまで抗議に押し寄せるという事態も発生した。
 張氏はTSMCの株を1%も所有していないが、こうした状況を目の当たりにし、復帰を決意。以後、同社の業績は回復し、台湾の半導体業界全体も徐々に良い傾向になっている。このことは張会長のキャリア生涯に新たな1ページを加えただけでなく、張氏の活躍振りがTSMCの歴史的出来事にもなった。
 同誌によると、TSMCの今年度第三四半期の純利益は前年同期比62%増の17億米ドルの増収で通年ベースではさらに数字が高まる見込み。張会長はR&D支出(研究開発費)を主張して最新鋭のチップ工場に投資した。完成後はOEMの受注増へとつながり、株主らからの高評価を得た。また1980年代の個人パソコン、その後の携帯ブーム、そして第三の改革を推進。同社の主力事業であるチップ生産の伸長は、スマートフォンとタブレットコンピューター向けの生産へ広げるなど、同社の3つのステップを常にリードしている。
 今回の受賞で米・半導体大手のクアルコム(12月4日に液晶画面部門でシャープと資本業務提携を発表)のSteaven Mollenkopf総裁は張会長の半導体生産産業への惜しみない協力に賞賛を称えている。
 また、今年10月に発表された台湾の企業イメージ、競争力産業別調査でTSMCは16年連続で総合1位となっており、企業の先見性、顧客志向、長期投資、技術開発、人材育成、財務能力、運営実績、社会的責任、グローバル性、イノベーションの10項目の指標の全てにおいて最高評価を獲得した。これらは“台湾半導体産業の父”と呼ばれている張氏の功績に他ならない。市場ではTSMCの新たなターゲットとしてiPhoneで絶好調の米・アップルが囁かれている。