台湾中部、嘉義駅からバスで約2時間。嘉義県竹崎郷中和村の奮起湖は、海抜1400メートル、東西北三方を山に囲まれた平地に位置する。台湾最高峰、阿里山に向かう観光客が途中で立ち寄る場所でもある。奮起湖と言っても湖があるわけではなく、山間の入江のような地形を湖に例えたことが転じて、この名がついた。
奮起湖で最も人気が高い「食」と言えば、奮起湖大飯店で売られている弁当(駅弁)だ。かつて阿里山蒸気機関車は、奮起湖で機関車を交換し休息。停車時間が比較的長いため行楽客は食べ物を買ったり、古い街を散策した。駅弁はもともとは機関車が石炭や水を補給するために停車している間に食べていたのが、味も美味しく、全国に知られるようになったのだ。
長い白髭が特徴的で、弁当が評判になったことで自身も有名人になった大飯店の名物オーナー林金坤さんは「米は台東関山の白米『皇帝米』を使っている。メインの具材には鶏の腿、豚のスペアリブ。鶏肉は紅麹に漬け込んでいるから身体にも良い。豚肉は昔懐かしの味を再現、先祖代々伝わる味を大事にしている」と自信を持つ。米は一粒一粒が立っており、鶏肉、豚肉どちらも味がよく沁みており柔らかい。
奮起湖のもう一つの名物は鉄蛋(鉄たまご)だ。ウズラの卵を酒、砂糖、八角などを加えた醤油で煮ては乾かす工程を繰り返したもの。煮る工程の中で、卵は黒色に着色し、サイズも一回り小さくなる。食感はかなり硬く、歯ごたえと香りを楽しむ。鉄蛋店の店員は「この店では『硬』と『軟』の2段階の硬さで販売している。鉄蛋は煮れば煮るほど、硬く黒くなる」と鉄蛋の特徴について説明した。
奮起湖風景区は滝や渓流など自然の景観が豊かで、春から夏にはホタルの鑑賞会が開かれている。付近の集落における物資の集散地でもあった奮起湖。鉄道博物館には、阿里山鉄道で使われていた蒸気機関車とディーゼル機関車が展示されている。