台湾の2013年の旧正月は最大9連休と言うこともあり、連休を故郷や行楽地で過ごそうとする人で各地の交通機関は混雑した。このため各交通機関では旧正月期間中の混雑を少しでも緩和しようと、様々な対策が打ち出された。
台湾鉄路(台鉄)では、旧正月直前の2月6日からプユマ号向け新型列車TEMU2000型を営業投入し、東部幹線の輸送力増強に努めたほか、2月7日から2月18日までの旧正月期間中には、全線で658列車を増発、1577車両を増結し、急増する乗客に対応した。交通部によると、一日平均67万人が利用し、昨年同時期の61万人に比べ、全体で10%の増客増となった。しかし、混雑率は昨年に比べて3%減少しており、台鉄は「旧正月期間の輸送サービスに改善が見られた」としている。一方台湾高速鉄路(高鉄)では、347列車を増発、一日平均17万人が利用し、こちらも昨年に比べて11%の乗客増となった。
高速道路では、オフピーク時の高速道路利用を促そうと、午前0時から午前7時までの時間帯で、通行料徴収を休止し、事実上の無料開放となった。このほか、一部インターチェンジでは入り口閉鎖や午前7時から12時までは3人以上が乗車した車両でなければ高速道路に進入することができない「高乗載管制」の措置がとられた。また、高速バスも各社で増発が行なわれ、西部の高速バスは全体で13650便が運行され、通常よりも30%増発された計算になる。また、雪山トンネルを経由して台北と宜蘭を結ぶ路線では、通常よりも66%増発した1250便を運行し、高速道路の混雑緩和に努めた。
また、台湾と離島を結ぶ航空路線では一風変わった光景が見られた。2月5日以降、馬祖や金門地区では天候が悪化し、航空便や船便が欠航、足止めされた乗客が空港に長時間の滞在を余儀なくされる事態が発生した。このため国防部はC‐130輸送機の派遣を決定し、軍用機で民間人を輸送した。国防部は「この措置は民間航空機の不足を解決するもので、足止めされた民衆と国軍兵士を帰郷させ、旧正月を迎えられるように協力した」と発表した。この様な措置は春から夏にかけて濃霧が発生した時などにも行なわれるが、旧正月の帰省を楽しみにしていた利用者にとってみれば、非常にありがたい特別措置だったのではないだろうか。
一家団欒を重視する台湾では、旧正月や祝日などを家族や親戚と一緒に過ごすことが多く、それだけ帰省ラッシュも激しいものとなる。そのため、旅行者や交通量が急増する時期には、これらのような「思い切った措置」がとられる。旧正月期間中、台北の街中から喧騒が消え、ひっそりと静まりかえる。その背景には、故郷で旧正月を過ごす人を「思い切った措置」で安全に目的地へ送り届ける交通機関の存在が大きく関わっていると言える。