工作機械の見本市としては台湾最大規模の「台北国際工作機械見本市(TIMTOS)」が台北市の世界貿易センターと南港エキシビジョンセンターで3月5日から10日まで行なわれている。このイベントは二年に一度開催されるもので、1009社、約5400ブースが出展しており、合計で20億ドル規模の取引が見込まれている。
会場には日本のみならず世界中から見学者が訪れ、台湾の工作機械に対する関心の高さを伺わせた。安価で高品質の台湾の工作機械及び工業製品は、今や世界中の工業で欠かせない存在。特に国際競争力が低下している日本の工業において、部品を台湾から調達したり、拠点を台湾へ移す事はもはや特別な事例ではなくなっており、近年は中小企業の台湾進出も顕著だと言う。
会場を訪れていた工作機械メーカーエヌテックの河合紀幸取締役は、台湾で合弁会社を設立する予定だと言い、その理由を「工作機械の取引は日本から輸出する際、高い関税や色々な書類が必要。(最近は)日本でも仕事の受注がなく、それならアジア圏で、と思った」と語った。また、アジアの中でも台湾を重視している事については「経済も発展し、景気や治安も良く、人も親日的だ。台湾をセンターとして、大陸やタイ、マレーシアで仕事を取ってくると言う役割を担わせたい」と語った。
台湾を含めた海外への進出を検討している金森機工の金森誠社長は、「今、日本のもの作りは海外に流出している。私たちも物を卸したり買ってもらったりするが、買う物がだんだん海外工場で作られるようになっている。昔は日本から送っていた物も、現地調達できるようになっている。その結果、私たちの物も買ってもらえなくなっている」と、日本の現状を語った上で、海外で生き残りの道を模索したい考えを明かした。
しかし、台湾で事業を展開する上ではトラブルもある。既に台湾でも現地法人を設立している研削砥石販売タカオカメガの十二慶子さんは「(台湾で製造された商品が)日本のユーザーさんから、要求している品質と違うと言われる事はある」、「本当に何かあった場合は、現地へ飛ぶ事もある」と話し、台湾企業にお客さんがクレームを言っている理由をきちんと説明すると言う。「相手(取引している台湾企業)にも気持ちがあるから、気持ちよく仕事してもらわないと(取引関係が)続かないですし」(十二慶子さん)。
タカオカメガの十二慎一郎取締役社長も「日本人は台湾人を信用するかしないか、台湾人を日本人を信用するかしないか。それだけしかないと思う」と台湾進出の際は信頼関係の構築が重要だと話す。また、「外国ではこの人と付き合うとメリットが有ると思ったら、会社の大小に構わず、良い関係ができる」と話し、日本の中小企業であっても、技術力を持っていれば、ビジネスのチャンスがある事を強調する。
「台湾の奇跡」とも呼ばれた経済成長を遂げて成熟した台湾の工業は、アジアとの強い関わりを武器に、更に飛躍しようとしているばかりか、不況が長期化し、生き残りをかけた日本の中小企業にとっても重要な役割を果たしつつある。