日本では食べられない日本の味「横浜ちゃんぽん亭」

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MRT中山駅と双連駅のちょうど中間地点にある「横浜ちゃんぽん亭」は2011年11月にオープンしたレストラン。日本の味そのままのちゃんぽんが自慢だ。

 

中山駅と双連駅の中間地点に位置する横浜ちゃんぽん亭
中山駅と双連駅の中間地点に位置する横浜ちゃんぽん亭

 

店主の十文字誠さんは元サラリーマン。中学一年の時の担任教師が「湾生(台湾生まれの日本人)」で、台湾に対して元々良い印象を持っていた。1998年6月に初海外出張で初訪台。早朝に圓山ホテルのテラスでむっとした湿度の高い空気に「何か私の人生で新しい事が始まったな」と強烈に感じたと言う。その後、2000年から2008年にかけて台湾高速鉄道(台湾高鉄)の受注及び建設に従事。日本と台湾を往復する日々を送った。

 

台湾高鉄プロジェクトが終了し、日本へ帰国すると「祭りの後」の感覚に襲われた。2010年に早期退職。どうしようかと考えていた時に、以前から日本に帰国する度に食べていたちゃんぽん屋を台湾で開けたらと思い立った。しかし飲食店経営には全くの素人。行きつけだった「横浜ちゃんぽん亭」の店主に相談すると、快く指導を引き受けてくれた。また、2011年の東日本大震災の際、知人から台湾の仮設住宅を被災地に届けられないかと相談を持ちかけられ、台湾での長期滞在を再開。その際、店舗用の物件を見つけ、開業を決意したと言う。

 

アットホームな店内。内装も十文字さん自ら手がけたと言う。
アットホームな店内。内装も十文字さん自ら手がけたと言う。

 

台湾にラーメン屋は多い。しかし2011年当時、ちゃんぽん屋はほとんど存在しなかった。あったとしても、「ちゃんぽんの様なもの」ばかり。「本当のちゃんぽんは麺と一緒に野菜を煮込むもの。出てきて上にドバッと野菜が乗っているのは有り得ない」。ただ、現在でもちゃんぽんの知名度は決して高くなく、ちゃんぽんとは何かを説明することも。「宗教の布教活動と一緒ですよ」と笑う。地道な布教活動が奏功し、今では台湾人の常連さんの姿も。

 

材料についてはとんかつソースを除いて、全て台湾で現地調達。ちゃんぽんの命とも言える麺も台湾の製麺所で作られたものだ。「ちゃんぽんはラーメンと作り方が違う。作り方が違うと言うことは麺の性質も違う」。ちゃんぽんの麺は、煮込んでも伸びないものが必要。三カ所の製麺所に何度も試作してもらい、納得できたものを使っている。試作品を依頼する時も、まずちゃんぽんとは何かを中国語で説明する必要があり、苦労したと言う。だからこそ「麺は自信作なんです」と胸を張る。

 

店主の十文字誠さん
店主の十文字誠さん

 

今後の目標について「この店の売り上げをもっと伸ばすこと。そしてもっとお店を増やしたい。せっかく日本から来ている以上は」と話す。また、台湾高速鉄道建設に携わった人たちの同窓会も開きたいと考えているそうだ。十文字さんがちゃんぽん屋経営のノウハウを教わった本家「横浜ちゃんぽん亭」は、東日本大震災の影響で残念ながら閉店したと言う。しかしその味と信念は台湾、台北の地でしっかりと受け継がれている。