台北から電車やバスで一時間前後。「基隆北海岸地方」と呼ばれる基隆市と新北市の太平洋側の地域は、台湾旅行で欠かすことのできないスポットが盛りだくさん。初めて台湾に来る人だけでなく、リピーターの人でも充分に楽しめる魅力満載のエリアだ。
「基隆」は古くから栄えた台湾北部最大の港町。中心部はどこか懐かしい建物が軒を連ね、散歩するだけでも楽しい。基隆港の東側、小高い丘の上にある「中正公園」は市街地が一望できる市民の憩いの場。奠済宮と呼ばれる廟を中心に広がる「基隆廟口夜市」は基隆市民の台所である。特に海鮮が美味しいことで知られており、カニのバター焼きやイカのスープをはじめ、アワアワアイス、栄養サンドイッチなど、基隆の夜市ならではのグルメが盛りだくさんだ。
「九份」も絶対に外せないスポットのひとつ。山の斜面に張り付くように立ち並ぶ建物群は、まさに壮観である。かつては炭鉱の町であったが、戦後になり閉山。衰退の一途をたどるも、1989年の台湾映画「悲恋城市」の舞台となり、人気の観光スポットとして一躍活気が戻るようになった。狭い路地に続くにぎやかな商店街はノスタルジックの雰囲気が満点だ。ここではタロイモ団子や、肉円と呼ばれる食べ物が有名。眺めのよいレストランや茶芸館で、台湾茶を楽しみながら、まったりと過ごすのも良いだろう。お腹も心も満たされるちょっと非日常な空間を感じてほしい。
リピーターの方には九份から少し奥にある「金瓜石」がお勧めだ。金鉱として栄えたこの場所には黄金博物館があり、採掘当時の様子を今に伝えている。砂金採りの体験もでき、お土産としても最適だ。また、この黄金博物館付近には日本統治時代の木造家屋や、金瓜石神社の遺構が残されており、歴史を肌で感じられる。また、金瓜石から海側へ下った場所にある「水湳洞」は隠れた名所。水が地中の金属成分と反応して黄色くなった「黄金の滝」や「陰陽海」を見ることができる。そしてこちらも日本統治時代の製銅工場だった遺構は荘厳であり、圧倒させられること間違いないだろう。
そして新北市野柳にある「野柳地質公園」も観光客に人気のスポット。海に突き出た岬が風雨と波に浸食され、世界的にも珍しい光景が広がっている。なかでも「女王頭」と呼ばれる奇岩は写真撮影に長蛇の列ができるほどの人気。この女王頭は現在でも風雨に浸食され続け、最終的には折れてしまうと言われており、一見の価値あり。また、公園内では地層に残された化石や、浸食によって刻まれた地表の模様など、自然が持つ神秘的な力の大きさを改めて認識できる。
基隆北海岸は、台北近郊でありながら、美しい自然と独自の文化や歴史を残す、場所。一度行った事があっても、以前とは違う路地を歩けば、また新しい発見がある。