日本学生支援機構は7月20日と21日、高雄と台北で日本留学展2013を実施した。今年で16回目となる台湾での留学展には、国公立大学78校、専門学校68校、日本語学校49校が参加。会場には日本留学に興味を持つ多くの学生や父兄が訪れ、各ブースで熱心に説明を受けていた。しかしグローバル化を図りたい日本の教育機関の思惑とは裏腹に、近年台湾からの留学生が減少傾向にあり、この現状に歯止めをかけたいと言う胸の内が伺えた。
台北会場の開幕式で日本学生支援機構の米川英樹理事は、台湾からの留学生は2012年の時点で4,612人いることに触れた上で、今回のイベントを通じて「日本には質が高くて多様な教育機関があることを是非とも自分自身で実感していただければ」と語った。教育部の国際及両岸教育司盧雲賓課長は教育部は日台教育交流を特に重視していると述べ、現在、各方面において交流が活発で、良好な関係が結べていることの背景には、教育における日台交流が基礎があると話した。また、交流協会岡田健一総務部長は東日本大震災後の良好な日台関係に言及し、「日台間の特別な絆をこれから日本に留学する若い皆様がさらに強いものにしていただくことを期待する」と述べた。
法政大学国際交流センターの福井真美子さんはアジアを中心とした国々から留学生を呼びたいと話す。また、今年から台北市内に台湾事務所を開設しており、さらに多くの台湾人学生を取り込みたい考えだ。麗沢大学国際交流センターの小出裕三課長は、25年以上前から淡江大学と提携を結んでいるほか、実践大学や屏東の大学とも提携を結び、台湾との繋がりは深いと話す。亜細亜大学も台湾との関わりが深い学校の一つだ。国際交流センター留学生支援課の大森敦夫主事は、同大学の卒業生には台湾の第一線で活躍している人もいると話す。また、独自の奨学金制度やインターンシップ制度を打ち出し、他校との差別化を図っていると言う。
ところが、どの大学も台湾人の学生数は以前と比較して減少傾向にある。前述の大学以外でも、中央大学や慶応義塾大学でも状況は同様だ。日本学生支援機構の米川理事は「(昨年までの)円高」、「震災」「台湾の教育界がアメリカ志向になっている」が背景にあるのではないかと分析する。その一方で、台湾の学生は優秀な学生が多いこと、日本とパーソナリティ、考え方が近い点を指摘し、「日本の学生に良い影響を与えてくれる」存在として、台湾人学生の取り込みは重要だと語る。「日本と台湾の学生にとって非常に良い関係になっているのでは」とも。
それでも会場を訪れていた学生や父兄は、日本留学を前向きに検討している人が多く見受けられた。新北市から来た大学2年生の女子学生2人は親しみのある国である日本留学に興味があると言う。ただ、日本語は学んだことはなく、「進学するにしても先に日本語をある程度学ばないといけないね」と説明を受けた感想を語る。台北市の大学3年生の男子学生は商業系学科の大学院進学をしたいと話す。「日本にどんな大学があるか解らないからとりあえず東京周辺の大学の資料を集めに来た」と語り、大量の資料を見せてくれた。
また、子供に付き添い会場を訪れたと言う男性は、「子供が大きくなったから、世界をもっと見せてあげたい」と、子供の留学には賛成だ。ただ、生活費や学費の負担は大きく「だから色々資料を集めないとね」と学費の優遇制度や奨学金を利用したい考えを明かした。日本で進学を希望している大学生の息子のために資料を集めに来たと言う女性は「できる限りで留学を支援したい」と話す。しかし、学費の負担はやはり大きく、交流協会の奨学金制度を知ると、「後で説明会にも参加するわ」と資料にじっくりと目を通していた。