日本の台湾統治を検証したNHKの番組(※)で名誉を傷つけられたとして、出演した台湾人ら42人が損害賠償を求めた控訴審で、東京高裁は11月28日、原告側敗訴の一審判決を取り消し、NHKに対し、パイワン族の出演者・高許月妹さんに100万円の支払いを命ずる判決を下した。視聴者等への損害賠償については棄却されたものの、その心情は理解できるとした。
※NHKスペシャルシリーズ 「JAPANデビュー」初回放送「アジアの“一等国”」( 総合2009年4月5日21:00~22:15)。ちなみに、同番組の制作統括は河野伸洋氏、ディレクターは濱崎憲一氏、島田雄介氏だった。一審では島田ディレクターが被告側証人。
※台湾新聞9月29日記事(「「JAPANデビュー」二審判決前に弁護士が講演~日本李登輝友の会第11回台湾セミナー」
問題の番組は、2009年4月放送のNHKスペシャル。日本政府が1910年、ロンドンの日英博覧会で台湾の原住民族を「人間動物園」と称して見せ物にしたとの内容で、女性は見せ物にされた男性の娘として紹介された。原告側は控訴審で計710万円を請求していた。
昨年12月の東京地裁判決はNHK側の責任を否定したが、高裁判決は「『人間動物園』は深刻な人種差別的表現。番組の趣旨を知っていれば女性が取材に応じたとは考えられない」としてNHKの責任を認めた。
なお、判決について、原告の弁護士(原告団長:髙池克彦弁護士)は「公共放送によるずさんな取材が認定された。判決はかなり強い調子で糾弾しており、画期的だ」とコメントした。NHKは「判決内容を検討して今後の対応を決める」としている。
判決文の一部は以下の通り。
「以上によれば、控訴人の父親が日英博覧会の「人間動物園」で見世物として展示されたとする本件番組を被控訴人が放送したことは、控訴人の社会的評価を低下させ、その名誉を侵害するものとして、不法行為を構成するというべきである。本件番組は、日本の台湾統治が台湾の人々に深い傷を残したと放送しているが、本件番組こそ、その配慮のない取材や編集等によって、台湾の人たちや特に高士村の人たち、そして、79歳と高齢、無口だった父親を誇りに思っている控訴人の心に、深い傷を残したものというべきであり、これに上記認定のとおり、本件番組の内容や影響の大きさ等の一切の事情を斟酌すると、控訴人の被った精神的苦痛を感謝するには、100万円をもって相当というべきである」。