元NHKディレクターが語る「NHK・JAPANデビューの背景と影響」

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東海大学羽生浩一准教授
東海大学羽生浩一准教授

日本李登輝友の会は、2月22日、都内で「第 15 回台湾セミナー」を開催した。講師のひとりは東海大学羽生浩一准教授(元NHKディレクター)だった。

冒頭、挨拶に経った柚原正敬事務局長は、NHKスペシャル「JAPANデビュー~アジアの一等国」(2009年4月5日午後9時~)の放送後、日台双方から猛烈な批判と抗議の声が上がり、結果、訴訟となり、第一審の原告数は日本の裁判史上最大の1万355人にもなったこと、2012年2月14日の第一審判決は原告全面敗訴になったものの、2013年11月28日の控訴審判決では、一部勝訴となったことなどを報告した。

これを受けて、「歴史検証番組の危うさ~NHK・JAPANデビューの背景と影響」と題して羽生氏が講演を行った。羽生氏は、台湾では本年8月から高校の指導要綱が改訂となり、歴史、地理、公民の3教科の内容が、例えば、日本の統治時代を「日本の強制的な植民地化の時代」と表現したり、従軍慰安婦について「強制的な」を入れたり、歴史教育においては、これまで台湾史、中国史、世界史を三分の一ずつ均等に教えていたが、台湾史を中国史の中に組み込むといったように変更がなされるとし、懸念を表明した。

「こうした動きは台湾では脱台湾化、脱日本化だと批判されてもいます。まさに台湾も自分の国の歴史が大きく変わると同時に日本との関係史も変化の時期を迎えていると言えます。『JAPANデビュー』問題の背景にはこうした文脈があることを知っておいて欲しいと思います」(羽生准教授)

その上で、羽生氏は、「JAPANデビュー」の問題点を、多方面から指摘した。1.日本人が台湾人を見下すような形で扱っていたことを強調するために「人間動物園」という言葉を使った、2.パイワン族の女性が父親が見世物にされたことを知って泣いたかのようなシーンは、恣意的な編集の疑惑があり、やらせがあった、3.1910年当時「人間動物園」という言葉は存在していないにもかかわらず、有名でも権威があるわけでもないブランシャールという無名の取材協力者を登場させて人間動物園にオスミツキを与えようとした、4.番組に余裕が感じられないのは、取材が当初の方針通りいかず、途中で変更したために時間がなくなり、ストーリーありきの材料で番組を作ったのでないか(と思われる)、5.視聴率狙いがあったのではないか、6.ほかのメディア(本や新聞)が扱っている、検証済のものを使えば番組が成立するのではないかという安易な考えがなかったか、7、放送法上では、日本の植民地時代についてネガティブな面だけをクローズアップするなど、第4条の「公平性」に抵触するのではないか、など。

最後に、羽生氏は「こういうふうに作られた番組が独り歩きしてしまいます。とくに海外とかに。ある種、政府から批判され、世間から批判されることにより、世論がNHKは国が管理しても仕方ないんじゃないかとなってしまうおそれを感じます」と締めくくった。

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