東京国立博物館(以下:東博)で開催中の「台北國立故宮博物院-神品至宝-」に関連するイベントとして8月21日、読売書法会の講師3人による席上揮毫(きごう)会が行われた。同会では日本を代表する書家としてしられる樽本樹邨氏、星弘道氏、髙木聖雨氏による書のパフォーマンスを行い、書道の奥深さを来場者に伝えた。講師らはそれぞれ、同展に展示してある書物から抜粋した一節の臨書と自らの創作を発表した。
東博副館長の島谷弘幸氏によると、「書の魅力を伝えるには描いているところを見てもらうのが一番だ」と考え、同会を企画したという。
日本書作院理事長及び読売書法会常任総務であり、戒行寺の住職も務める星氏は、同会終了後のインタビューで台湾の繁体字について言及し、書道にもそのまま使える歴史ある繁体字をこれからも守り続けて欲しいと話した。また、同展について星氏は「台北國立故宮博物院にも3回程行ったが、今回改めて影響を受けた。印刷のものではなく、本物を見るということはとても意味があること。本物は紙の質も墨色も伝わってくる。書道を学ぶ若い世代の人にも是非見て欲しい」と述べた。
このほど星氏が臨書した、唐時代の作品で孫過庭筆草書書譜巻の一節は30万円するという羊毛の筆が用いられた。筆草書書譜巻には、書法を学んだ経験や書譜の要旨、書法を学ぶ際の基本原則などが主に描かれている。パフォーマンス中の星氏の筆の運びはすらすらと穏やかに流れる小川のようで、文字を描いているというより、文字が浮かび上がっているように見えた。完成した作品は、本物と変わらぬ美しさで会場からため息がもれていた。
島谷氏は「同会で、来場者の皆様には書を描く面白さや、観る楽しさを感じてもらえたと思います。現在開催中の同展も残すことあと1カ月ほどとなってしまいました。最後の2週間は混むと思うので、比較的すいている今の時期に文物をゆっくり観て欲しいですね。実は私も毎日同展の書物を観て、毎日違った発見をしています。書物に『おはよう』と『おやすみ』をするのが日課です」と話した。同展はまもなく動員客数30万人を突破するという(8月20日現在)。