太宰府市の九州国立博物館で開幕の「台北国立故宮博物院展」に先立ち、台湾メディアなどに内容を公開する「プレス内覧会」が開催された。解説を務めた九州国立博物館・主任研究員の畑靖紀氏がスクリーンを使って開催までの経緯等を説明しながら、「照明を特に工夫した。照度の制限がある中で、どのように見せるかを特に考えた」と演出の舞台裏を語った。その後、畑氏は、メディア陣に対して作品展示されているフロアを案内。福岡や熊本からもレポート番組が撮影を行う中で、畑氏は、作品の歴史や演出方法を説明。故宮博物院展は、作品群をテーマで区分けしており、分かりやすい仕組みで観覧客を魅了する。
第1章の主題は「中国士大夫の精神」で、官吏登用の選抜試験として科挙を採用した中国が背景となっている。豊かな教養をもった士大夫が文化の指導者として活躍、このような知識人が青磁、宋・元時代の優れた書画、憧れの対象である青銅器を展示。代表的な作品は、鹿が群をなす自然を描いた「秋林群鹿図軸」や王羲之の傑作「定武蘭亭序巻」。
第2章は「天と人との競合」がテーマで、古くから権力を象徴する目的で生まれた多彩な器物が中心だ。皇帝が王位の正当性を示す神聖な器物として収集した古代の玉や青銅器から、明時代の精緻で高雅な官営工房の名品まで美しく巧みに作り上げられた器物の世界が展開されている。代表的な作品は、度量衡を定める器「新嘉量」や、東西の交流が生んだ「青花龍文大瓶」。第3章は「中国歴史文化の再編」で、満州族が建てた清王朝が舞台だ。伝統的な文化を深く理解し、中国の歴史や文化そのものを再編していく王朝。乾隆帝をはじめとする皇帝が主導した文化事業とともに官営の工房で制作された陶磁などを紹介している。代表的な作品は、景徳鎮の粋とされる「粉彩透彫雲龍文冠架」や、金魚が異彩を放つ「藍地描金粉彩游魚文回転瓶」など。
畑氏が解説を加えると、参加した記者は大きく頷いたり、感嘆の声を上げていた。畑氏は「今回の故宮博物院展は、非常に充実した、内容を持った展覧会と言える」と報道陣に太鼓判を押した。