台湾において最も多くのレパートリーを持つオーケストラとして活動している台北市立交響楽団は、台北市文化局と共催による公演「チャイコフスキーの夕べ」を札幌・横浜の二地区で開催し、日本の観衆を魅了した。2012年の金沢で行われた「ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の日』音楽祭2012」以来の日本公演。
今回の公演は、指揮者に主席指揮者であるギルバート・ヴァルガを起用し、そのギルバードと親交のある国際的ピアニスト、アンナ・ヴィニツカヤを招いて開かれた。演目はピアノ協奏曲第1番、交響曲第6番「悲愴」及び歌劇「エフゲニー・オネーギン」など、チャイコフスキーのメドレーを演奏した。
札幌地区の公演は11月18日に開かれ、横浜地区の開催は横浜みなとみらいホールで11月20日に行われた。演奏後、会場の鳴りやまぬ拍手に応じてアンナのピアノによるアンコールが2回、さらに楽団の3回にわたるアンコールが行われ、大成功を収めた。
ギルバートは特に横浜の会場となった横浜みなとみらいホールを「美しいホールだ。台北市立交響楽団もこのような自分たちのホールが持てたら良いなと思う」と絶賛していた。
ギルバートが同団の首席指揮者に就任したのは2013年のこと。「ギルバートが来てから同団は大きく変化を遂げている。皆の結束力も強まり、オーケストラに対する考え方が変わった。また、ギルバートは耳での聴き取りをとても大切にしていて、聴き取りの練習を重視した結果、音楽が前より聞こえてくるようになった」と、ヴァイオリン奏者でコンサートマスターの姜智譯は絶賛する。またギルバートは同団を、「感受性が豊かなオーケストラだ。指揮をするときにストーリーやイメージを伝えると、それを感じ取り表現することが出来ている」と評価している。
ギルバートの父はヴァイオリン奏者、また姜智譯は自身も指揮を振ることがあり、2人の共通点は多い。そして共通の目標も「同団をアジアナンバーワンのオーケストラにすること」であるという。
同団と一緒に来日した台北市文化局の林慧芬副局長は「アジアそして世界で活躍するためには、海外公演を増やし知名度を上げていくことが大切になってくるだろう。こんなにレベルが高いのにあまり知られていないのは残念でならない」と話していた。また、会場に訪れていた台北駐日経済文化代表処横浜分処の粘信士処長も、「今日は同団のレベルの高さを実感した。しかし、同団がレベルの高い楽団という事は日本であまり知られていない。これからもっと日本の皆さんにPRして頂きたい」と述べていた。
演奏を聞いた日本人女性に感想を聞いたところ、「最近台湾にはまっていて既に4回は旅行に行った。そして今回、たまたまチラシをみて同団がやってくることを知り、台湾が好きという理由だけで聴きに来た。正直思っていた以上の素晴らしい演奏で感動し、台湾に行きたい気持ちが増した」と笑顔で話していた。
同団の演奏は、札幌と横浜会場に訪れた観衆の心に印象付けられたことは間違いないだろう。