台北国立故宮博物院展、九州国博の閉幕までラストスパート

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太宰府市の九州国立博物館で開催されている特別展「台北國立故宮博物院 神品至宝」は、閉幕まで残り僅かとなり、リピーターも足を運ぶ盛況ぶりとなっている。膨大な所蔵物の中から厳選された110点を展示。九州国立博物館は、様々な国の文化に触れる特別展が開催してきたが、中国の歴史に触れられる故宮博物院の所蔵品が、今回初めて日本に上陸した。東京に続き福岡で開催され、既に来場者が10万人を超えた展覧会は魅力に溢れている。

國立故宮博物院は、中華民国最大の国立博物館だ。所蔵品は優に69万点を超え、ほとんどは中国の古代の皇帝によって収集されたものだ。様々な工芸品、美術品、その全てが美しく、手の込んだ作りになっている。特に清の時代に作られたとされる『紫檀多宝格』という約25センチ四方の紫檀製の小箱は、30点もの器物が収められているまさに乾隆帝のコレクションの縮図であると言えよう。30点の器物は、皇帝が選んだ古今東西の名品をミニチュア化した。手のひらに乗るサイズの青銅器や文房具など中国の様々な工芸品から、ルビーの指輪という中国由来ではないものまで、おもちゃ箱のような、宝箱のような皇帝の遊び心を感じることができる。面白いのは、この中身の遊び心だけではない。多宝格の側面には窓があり、そこには宋・元の時代の代表的な書や絵画などを、筆使いまで緻密に再現している。どこから見ても仕掛けだらけのこの一品を堪能できる。

『刺繍普賢菩薩像軸』も見どころ。美麗な絵画は多数所蔵されているが、驚くべきはこの細密な絵が刺繍で作られているということだ。実物を初めて見た人は、二度感嘆の声を挙げる。何百年も前の作品であるはずなのに色あせない魅力と、糸の一本一本のきらめきに心を奪われるであろう。館内のスタッフが、「是非この作品を見る時は、正面から見たあとに、屈んで下から眺めてみてほしい」と教えてくれた。そうすると、刺繍に光が反射し、線の一つ一つが見えてくると言う。紙に描かれた色は時代と共に色褪せていくかもしれないが、この作品はタイムスリップしてここまで来たのではないかと思わせる輝きを放っている。

展示会の広告でもよくその姿を見かける、『藍地描金粉菜游魚文回転瓶』も圧巻。清の時代、中国の景徳鎮窯で作られた。深い藍色の壺に金箔で紋様が描かれ、外側の壺には4つの窓がある。窓の中を覗くと、赤や黒の金魚が泳いでいる様子も描かれている。壺の中に壺を入れて、その絵柄を見せるというギミックだけでも、非常に印象深い工芸品であるが、実はこの外側の壺の上部は回転式になっており、中の金魚が描かれた壺が泳いでいるように見える仕組みになっているのだ。写真で見ただけでもその精巧な作りに魅了される。実際に手にとって回してみることはできないが、展示室の映像で回っている様子を見ることができる。回っている所を想像しながら、展示を眺めるだけでも大いに楽しむことができる。展示会は、11月30日(日)まで開催。

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