台湾南部5県市の首長は3月3日、今年で40回目を迎えた国際食品・飲料展「FOODEX JAPAN 2015」にて、台湾南部の農産品などをPRするべく「南台湾県市農産宣伝連合記者会」を開催した。
このほどPRのために来日したのは、高雄市の陳菊市長、台南市の頼清徳市長、嘉義県の張花冠県長、雲林県の李進勇県長、屏東県の潘孟安県長の5人。同展に5人の首長が一度に訪れるのは初めてのことだ。
台湾では昨年の9月に廃油や皮革製品の製造過程で出た油脂などを再利用した油(以下:地溝油)が食用油として出回っていたことがわかり、大規模な回収騒ぎになった。これにより台湾の食品への信頼性は一時低迷し、日本でも台湾の商品の一部を輸入規制するなどの対策がとられていた。しかも、問題の地溝油を出荷していたのは、南部・高雄の企業だったこともあり、台湾南部の食品への信頼を取り戻す必要があったのだ。この台湾南部の食品への不信感を取り除くべく、今まで競合関係にあった5県市はこのほど、1つのチームとなり合同でプロモーションを行うこととなった。
高雄の陳市長は、「今まで起こった食の問題を解決するためには、県市長が重要な役割を果たす。台湾では特産品を沢山作っているため、問題がおきると農民の方々が大きな影響を受ける。同展で改めて優良な農産品をおみせしたいと思う。台湾の農産品は安全検査を厳しくしており、本当に安心安全です。自信があります。5県市が力を合わせて南台湾の農民の後ろ盾になりたい」と力強く述べた。
また、屏東の潘県長は「今までの5県市は競争してきたが、今回はそれを打ち破ることができる。5県市は一緒になって日本市場に対し台湾農産品の品質を保証したい。我々の最大の戦略は、品質でもって日本の方々の信頼を得るということ」と語った。
さらに、雲林の李県長は「これから大切になってくるのは協力だ。分け合うという時代に突入する。農産品を日本に持ってきて、日本の人と競争するのではなく、分かち合いたいと思っている。各国の気候や地理は異なっているので、様々な農業の形がある。今回はその分かち合いの精神で日本にやって来た。今後も日本の方々と努力を続けたい」と日本との協力関係も呼びかけていた。
なお、同記者会では高雄のゆるキャラ「高通通」も登場し、ダンスを披露するなどして高雄の農産品をPRしたほか、同展の開催会場、幕張メッセの位置する千葉のゆるキャラ「チーバ君」も応援に駆け付けた。
また、来賓として2006年に高雄と姉妹都市を結んでいる八王子市の石森孝志市長や黒須隆一前市長、八王子市議会の小林信夫議長も参加。石森市長は「今日は高雄市の応援団として参りました。高雄市は温暖で食事が美味しい町です。同展を通じて、台湾の魅力ある農産物を日本の皆さんに知っていただけますように」とエールを送った。
台湾パビリオンの出展数は過去最多!
また、同展の台湾パビリオンには今までで最多の110社が出展した。パビリオンの規模も、アメリカ・フランス・イタリア・タイ・韓国など計83ヵ国が出展する中で4位となっており、台湾が日本市場を重要視していることがわかった。
同展初日に行われた台湾パビリオン開幕式に出席した台湾貿易センターの黄文栄秘書長が挨拶で「今回の台湾パビリオンの規模は近年最大であり、台湾の農産食品のクオリティーの高さを示すものである」と強調したほか、経済部国際貿易局の陳永章主任秘書は、「昨年の日台間における農産品の輸出高の合計が660億米ドルに達するほど密接な貿易を行っている」と述べ、台湾にとって日本市場がいかに大切な市場であるかを説明した。
また、高雄でイズミ鯛やスズキ、ハタなど魚の切り身などを取り扱っている允偉興業股份有限公司の蔡俊雄会長は、「日本の回転寿司では既に台湾企業の魚の切り身を多く使用しており、イズミ鯛はほぼ全て台湾産である。また、桜えびが漁獲対象となっているのは静岡県の駿河湾と台湾のみであるため、桜えびは現在でもかなり日本に輸出している。今後もっと注目されるだろう」と述べ、台湾産海産物の日本市場参入の例を説明した。
出展企業は、お茶やフルーツ、野菜などの農産品、カラスミやうなぎなどの海産物、お菓子類など、台湾各地の特産物が並んだ。なお、高雄市政府は7社を引き連れて、去年と同様「高雄物産館」として出展した。
高雄物産館内に出展した「一鳴生技農園」はミラクルフルーツ(神秘果)シリーズ商品やグアバ、ライチ、パパイヤなどのドライフルーツをPR。ミラクルフルーツとは赤い小さい実だが、人の味覚を変えることが出来る不思議な実。ミラクルフルーツを食べた後にレモンを食べると、レモンが甘く感じるのだ。ミラクルフルーツを体験した来場者は「日本であまり見ないものだったが、美味しかった。台湾パビリオンを一通り見たが、日本と共通する部分が多いと感じた。台湾は他の中華圏よりも、日本に似ていると思う」と述べた。
さらに、100%オーガニックで無添加、無毒の果実と花のお酢を販売する台南の「太潤生技健康永續」は、今年で同展3回目の出展となった。同社のお酢は台南の頼市長オススメの品で、ドイツやソウル、ロシアなどの展示会で金賞を受賞している。同展でも毎回日本の来場者からの評判は高いという。今年は新商品として梅と棗の酵素酢を紹介した。同社の国際マーケティング代表の許琬宜さんは「他社の酵素酢は通常、味に癖があり、好んで飲みたくないようなものだ。しかし我々の酵素酢は台湾の果物を使っているので、とても甘くおいしく仕上がっている。飲んだ日本人の方も『のみやすい』と評価してくださった」と述べていた。
なお同日、台湾パビリオン付近のセミナールームでは台湾区製茶工業同業組合が来日し、「台湾ウーロン茶発表会」を開催。会場はほぼ満員となり、参加者らは台湾特産のウーロン茶を試飲するなどして理解を深めた。