台中市政府文化局(以下:台中文化局)は7月9日より13日まで、東京・芝浦のコミュニティスペース「SHIBAURA HOUSE」にて「2015 Creative Taichung-日本東京国際交流エキジビション」と題した展示会を開催した。同展示会は、今年の9月12日より同30日まで、台中市清水文化センターにて行われる展示会「2015 Creative Taichung」を先駆けて行われたもの。
同展示会では台湾・台中の“下午茶”(午後のお茶会)の文化にフォーカスを当て、モダンと伝統が融合した茶器や菓子器などの工芸品の展示を行った。そのほか、伝統的な版画体験ブースや、台中市特産品のお菓子やお茶のテイスティングなどを通じて、台中のライフスタイルを発信した。
また、初日の9日には同展示会開催を記念し、開会セレモニーが行われた。同セレモニーには、台中から台中文化局の王志誠局長、台湾天染工坊芸術総監の陳景林氏が来日したほか、同展示会に協力した一級建築士事務所アーキコンプレックスの廣瀬大祐代表、台湾文化センターの朱文清センター長らが出席した。
王局長によると、昨年台中市の市長に就任した林佳龍市長は「台中のクリエイティブで伝統的な工芸品を生活の中に取り入れ、台中をクリエイティブな生活の街にしていこう(=クリエイティブ台中)」という目標を掲げているという。そして、その“クリエイティブ台中”を海外にも発信するべく、台湾と一番生活様態が似ており、お互いの文化に理解がある日本を海外での初めての展示会の場として選択した。
王局長は「台中の工芸品には日本統治時代の影響が未だに残っている。日本の皆さんが見ても、どこか懐かしさを感じて頂けると思う」と述べたほか、「これからは、この伝統的な工芸品に新たな息吹を吹き込み、生活の中に取り入れ、そして残していきたい」と目標を語った。
これについて、廣瀬代表は、「台中の工芸品を手に取り触れてみると、台中に訪れた際に感じるおおらかで穏やかで心洗われるような雰囲気が伝わってくる。この素敵な工芸品が廃れないようにしたいが、台中では今、担い手や使い手が少なくなっている。これは20~30年前の日本と全く同じ状況。しかし日本はこれを上手く改善した」とした。そのうえで、「その改善における苦労を味わった日本の私たちは、状況打破のノウハウを伝授し、台中の皆さんと一緒に考えて行きたい」と述べた。廣瀬代表によると、日本はいくつか都市が町おこしに成功しており、その町おこしにより工芸品にもスポットが当てられ、古き良きものへの理解が深まっていったという。「工芸品そのものに対してのアドバイスをすることは難しいが、我々は建築や、人が来るための仕組みなど、全体的なところからお手伝いしたいと思っている」(廣瀬代表)
廣瀬代表は地域開発企業の「范特喜微創文化」から依頼を受け、台中の都市部に点在するまだ開発されていない箇所のリノベーションプロジェクト「綠光計畫 / Green Ray」を担ったことから台中と関わりを持つようになった。「綠光計畫 Green Ray」は、2013年9月に発足、2014年には「台中市都市生活空間賞大賞」を受賞している。廣瀬代表はかつて様々な国の文化の影響を受けた台湾の建物を、台湾の人々のためにもう一度手を加え、温かいこじんまりとした雰囲気をいかしつつ、台湾の伝統を感じさせる商業空間として生き返らせた。
なお、現在廣瀬さんは台中郊外の清水に位置する長屋のリノベーションを担当している。同リノベーションは高齢化が進み、都心へ流れていった人口を、文化の力で呼び戻そうという取り組み。こちらの長屋で開催される9月の「2015 Creative Taichung」で廣瀬代表は、日本人や、台湾人のインダストリアルデザイン、プロダクトデザイン、ヴィジュアルデザイン、建築および空間デザインを専攻している学生らに対し「台湾独特の午後のお茶文化に関するデザイン」をテーマにワークショップの開催を予定している。