新北市政府文化局の林寬裕局長はこのほど新北市立図書館の唐連成館長らを引き連れ来日し、11月10日、パシフィコ横浜で開催されている第17回図書館総合展内で、講演「台湾にみる次世代型図書館~知的情報交流空間のデザインと演出を検証~」を行った。
同講演は、今年の5月10日に開館した新北市立図書館の特色や、次世代型の図書館としてのあり方などを詳しく説明し、日本人の来場者に次世代型図書館への理解を深めてもらうことが目的。図書館流通センターが主催し、コーディネーターは東洋大学経済学研究科(公民連携専攻)客員教授の南学氏が務めた。
林局長は、はじめに「市民が集まる交流の場、そして生活の場となる必要がある」と述べ、これからの図書館のあり方を強調。「図書館は単なる施設やランドマークではなく、一般市民の文化、社会、ビジネス、学習、コミュニティ、エンターテインメント、電子情報アクセスの中心である」と位置づけた。
電子情報アクセスを例にあげると、同図書館では、館内のフロアガイドや学習室の予約を全て電子化し、タッチパネルでの操作を可能にしたほか、壁に大画面が埋め込まれタッチ操作で書籍検索や書籍ダウンロードなどを行う「eBooks Wall」を台湾で初めて導入するなど、インターネット時代に適合していけるよう、工夫が施されている。
また、台湾の公共図書館の中で最も多くの蔵書数を誇る同図書館は、24時間開館を台湾で初めて実施しており、いつでも好きな時に読書が出来るという。林局長は、「24時間開館している図書館はアメリカでも例がない。24時間態勢で警備員と従業員を常駐させているので、安全性も問題ない」と自信をみせた。
さらに、“ゆっくり読書をすること”を推進するため、日本風、地中海風、インドネシア風、北ヨーロッパ風などの特別閲覧室が設置されているほか、子供たちのために対話式読み聞かせ会の実施、高齢化を受けたシニア世代に役立つ資料室の設置、車いすなどにも対応した高さ調節機能付きテーブルの導入など、全世代の市民への快適な読書空間提供に尽力している。
同講演を聞いた図書館人材管理を行う女性は「新北市立図書館は図書館自体が1つの街みたいだと感じました。人が集まる仕組み、市民を育てる仕組みが考え抜かれた図書館だと思います。是非一度現地に行って体験してみたいです」と話していた。
現在、同図書館は開館から約半年で既に100万人の来場者を迎えており、林局長は来年の来場者数を220万人と見込んでいる。なお、台湾では高雄にすでにこのような市立図書館が存在するほか、桃園、台南、台中でも次世代型図書館の創設を進めており、台北市も現在建設場所を探している最中だという。
林局長は「各地の関係者が同図書館を視察し、参考にしている。我々は台湾市民と本との距離を近づけ、昔のように多くの人が本を読むように呼びかけていく。さらに多くの方に利用して頂ければ」と目標を語った。