2015年における日台双方の人的往来は対前年比19%増となり史上初めて500万人の大台を突破した。その後も、日台間観光客の往来は相変わらず活発であり、先日交通部観光局および台湾観光協会が発表した観光統計によると、2016年上半期(1月~6月)に日台間を往来した旅行客数の累計は310万9892人にも上っている。
しかし、このうち台湾からの訪日観光客数は約223万19人であったのに対し、日本からの訪台観光客数は87万9873人で、前年同期比17.87%増だったとはいえ、人口の比例で考えれば、まだまだ台湾訪日観光客数の方が比率は高く、観光面における「台湾の片思い」は今でも続いているのが現状だ。
この状況をどのように抜け出し、両想いにさせるか・・・。日台観光における現状と今後の展望について、今年の4月に台北市日本工商会の理事長に就任した日本航空(以下:JAL)台湾支店・佐藤晴之支店長に話を聞いた。
「最近の日本人が考える台湾旅行へのイメージは、『若い女性のお手軽旅行』が主流で、訪問先も台北が多い。このままでは、これ以上伸びるのは厳しいだろう」(佐藤支店長)。
台湾観光協会の顧問も兼任する佐藤支店長は、「現在の台湾観光PRには少し問題がある。少し前にマンゴーカキ氷や小龍包など、ありきたりな内容を推し出している台湾観光誘致コマーシャルが日本で流れていたが、今の時期にこのPRの仕方は違うと思う」と問題点を指摘。その上で佐藤支店長は、「新たなターゲットの矛先を家族三世代、絆を深められるような『安心安全家族旅行』とし、新たなターゲットの多様化が必要であると力説する。理由として「この方が単価は高くなるし人数も増えるだろう」と提起し、さらに「台北はシーズンにより、ホテル不足の問題もあるし、価格も上昇する。本当に観光客を誘致したいのならば、単価の高い顧客を増やさなければ難しい。もちろん若い女性層は現在の観光客の役半数を占める大切な層だが、今後倍増するかというと、それも難しい。台湾の地方の積極的な観光PRも必要です」(佐藤支店長)。
台湾地方の積極的なPRを訴求する佐藤支店長は、現在、JALでは成田から台北と高雄の2都市に飛ばしているという。他の地方への新たな就航区間の設定に対する問いには「実際、他の地方に飛ばしても儲からない。札幌は考えるが、これも台湾から札幌への片方のみの需要だ。北海道から台湾への乗客はそんなにいないだろう。これは厳しい現実」とした。
現在、日本では様々な地方が観光客誘致のためにLCCを就航しているが、佐藤支店長によると、これは日本の県がそれぞれに優遇処置を施すなど、かなりの補助を与えているから成り立つという。台湾の地方でも、ある程度の運航をしているものの、「さらなる地方への観光客取得を目指すため、より力を入れていく必要があるかもしれない」とは佐藤支店長の持論だ。
最後に佐藤支店長は、「台湾観光の誘致に向けては、日本側としても何かサポートできたらなと思っている。世代を超えて日本人が台湾に訪れ、台湾への理解を深めてくれればと思う」とし、未来の日台関係に期待を示した。