台湾人間国宝の廖瓊枝さんが脚本を書き下ろし、自らが監督を務めた「薪伝歌仔戯劇団」の台湾オペラ(歌仔戯=グアヒ)「李三娘(リ サンニュー)」が9月8日、東京・浅草公会堂で行われた。東京で同団台湾オペラの公演が行われるのはこれが2回目。会場は、日本で見る機会の少ない歌仔戯を鑑賞できる機会を逃すまいと、1000人を超える観客で満席となった。観客は2時間半の舞台であったにもかかわらず、その華やかで表現豊かな舞台に釘付けの様子で、中には感動で涙を流す人もいるほどだった。
開幕後、同公演の総合プロデュースを勤めた歌手の寒雲さんの紹介で台湾人間国宝の廖瓊枝さんが登場すると会場は大きな拍手で廖さんを向かえた。廖さんは衣装や舞台装置などないものの、歌声一つでその場を一瞬にして歌仔戯の世界に変えて魅せた。
廖さんは公演後、「このようにまた日本で公演を行うことが出来てとても光栄です。私には沢山の教え子が居ます。彼女達に更なる機会を与えたいと思っておりますので、また是非日本で公演できればと思います」と語った。
また、同団が公演した「李三娘」では、煌びやかな衣装や透き通る歌声、そしてたまにユーモアも組み込まれた演出で観客を魅了した。セリフは全て台湾語だったため、日本人でも解りやすいようにと、舞台両側にスクリーンが設置され、日本語訳も流された。
同公演を鑑賞したArtCompanyPierrotの総合演出家である森健太郎氏は、「始めて台湾オペラを観たが、日本の歌舞伎を連想させるようなユーモアもあり素晴らしかった。また、音楽の使い方などの演出は、私の舞台でも参考にしたい部分が多かった。また是非見たい」とコメントしていた。
同公演開催のきっかけを作った台湾文化センターの朱文清センター長は、「台湾文化センターが虎ノ門にオープンしてからずっと実現したいと思っていた公演でした。日本で台湾オペラを見るチャンスは多くありません。今回の公演では、台湾オペラの真髄を皆さんに紹介できたと思います。今後も日本の皆さんに台湾伝統文化を紹介していきたいと思っています」と述べた。
同公演は9月11日、石川・加賀市文化会館でも行われる。
◎台湾オペラとは?
台湾では「歌仔戯」(グアヒ)と言われる台湾オペラは、1800年代に福建省から台湾へ移民した人たちによって生み出された故郷で盛んだった説唱・唄・車鼓・踊りなどを融合させたもの。唯一、台湾で生まれ育った芸能とも言われている。当時の舞台劇に脚本というものはなく、 開演の2時間くらい前に監督から各役者に、役割とストーリーが説明され、役者たちは化粧をしながら自分に与えられた役の台詞や歌詞を、自分の頭の中で作り上げていく。※同公演パンフレットより引用