日本と台湾の“雅楽”が共演する公演「唐楽饗宴」が9月12日、銀座ブロッサム中央会館で行われた。同公演は1部では日本の真言宗豊山派に所属する「豊山雅楽会」、2部では台湾の「台南市南聲社(以下:南聲社)」がそれぞれ伝統的な雅楽を奏で、観客は日台雅楽の比較を楽しんだ。
主催の日本台湾芸術文化センターの鍋島吉朗氏によると、日台の雅楽会が同じ舞台で公演を行うのは同公演が初の試み。また、南聲社が日本公演を行うのも今回が初めて。
今回豊山雅楽会が演奏したのは、古代、仏教や宮中の儀礼の中で演奏された古代の慣例に倣った「五常楽急」、「平調音取」、「林歌」など。また、南聲社側は、恋愛について歌っている「紗窗外」、「共君斷約」など5曲だった。楽器の音色や装飾も日台でそれぞれ特色があり、1回で2つの公演を観たかのように充実した内容だった。
南聲社の魏麗珍総幹事は、「今回初めて生で日本の雅楽を聞いた。台湾と日本は異なる雅楽ではあるが、同じ“禅”と“静”の部分を感じた。お互いに伝統を継承する事は一番大切。今後も機会があれば日本で公演していきたい」と話した。
一方、公演を観賞した真言宗豊山派総本山長谷寺東京出張所の小林観秀主事は、「異なる雅楽でも、元は同じものなのではないかと感じた。同じものから枝分かれして出来た音楽であるという事を来場者の方にもわかってもらえただろう」と述べ、関係者らもお互いの雅楽に親近感を深める機会となっていた。
鍋島さんは、「日本で生まれ育った台湾人の皆さんをはじめ、雅楽を知らない人たちに雅楽とはどういうものなのか伝えたいと思い開催した。今後は台湾で日本の雅楽公演も企画したいと思っている」と述べ、今後も続けて日台の文化交流を促進させていくとした。
なお、観客からは、「同じような楽器もあって面白かった」、「台湾側の雅楽には楽譜が無いことにも驚いた」、「同じ舞台で異なる雅楽が聞けるという機会も素晴らしい」というコメントがあり、一人一人の観客の心にも響く公演となっていた。