国境を越えてより良い医療サービスを受けたいという「メディカルツーリズム」の動きが加速している。
癌や心臓病の先端的な治療を求めて東南アジアから日本を訪れる患者は多い。
逆にドナー不足や国内では認められていない治療を受けるために海外へ渡る日本人も多い。
台湾は10年ほど前から高い医療レベルと安い治療費を武器にメディカルツーリズム市場の開発に力を入れてきたが、生殖医療分野では2007年に「人工生殖法」が制定され、卵子提供による不妊治療が可能となった。そのため、ある時期に自分の卵子を冷凍保存して適切な時期に解凍したり、若くて健康な女性から提供された卵子と夫の精子による体外受精卵を自分のお腹で育てて分娩する方法が、子供に恵まれない夫婦にとっての福音とされるようになった。
これが、このような生殖医療が認められていない日本、中国、香港、マカオ、シンガポール、フィリピンなどから多くの患者を台湾に惹きつけ、積極的に外国人患者を受け入れる医療機関が増えている。
このうちのビッグ3に入る送子鳥医療センター(こうのとり医療センター:頼興華院長)の説明会が11月6日に福岡市のハイアットリージェンシー福岡で開催された。
台湾には卵子提供による生殖医療を実施している施設が75か所あるが、送子鳥医療センターの施術件数は年々増え続け2015年には591件となっている。外国人患者のうち最も多いのは香港、マカオを含む中国であるが、日本からの患者も多く、この日も24組の夫婦が頼院長の説明に熱心に耳を傾けた。
日本での説明会は、これまでの患者数が多い九州地区(福岡)を選んだが、これを皮切りに来年4月には東京で、8月には大阪で説明会を行う予定になっている。
この日の参加者24組についても九州が最も多いが、千葉、東京、大阪、沖縄から駆け付けた人もいる。参加動機は、医師や実際に治療を受けた人からの紹介が大半だが、ネットやSNSで知った人もいる。
送子鳥医療センターは台湾の空の玄関口である桃園国際空港から車で40分の新竹市にあり、生殖医療専門医4人、麻酔医1人の他、研究員やカウンセラーを含めて200人のスタッフを擁している。
同センターは世界各国から患者を受け入れており、受診者の50%は1回目の施術で受胎に成功している。2回目の施術まで入れると90%が受胎するという高い成功率を誇っており、高齢者受胎の例では、イタリア人女性の77歳、台湾人では62歳という例もある。
「さまざまな理由で若いときに妊娠することが出来なくても、子供がいる幸せな家庭を築きたいと思う人は多いはず。これらの人々の夢をかなえるお手伝いが出来ればこれほど幸せなことはない、と4人の生殖専門医とすべてのスタッフが考えている」と頼院長は言う。
受胎までの施術費用は平均180万円〜200万円。1回の施術には二度の来院が必要だが、それぞれの身体的な状態や他の病気の治療の必要性など、個々の条件によって、費用や来院回数は異なる。
受胎後は日本に戻って、連携先の病院で通常のケアを受けることになる。
送子鳥医療センターには日本語が堪能なスタッフも揃っており、安心して来院して欲しいと頼院長は締めくくった。