日本、台湾双方の課税権の調整と二重課税の排除等を取り決めた「日台租税協定」が2017年1月1日から適用開始されるのに合わせて、九州の企業に協定への理解を深めてもらい、台湾への投資を呼びかけるセミナーが12月20日、JR博多シティ会議室で開催された。(主催:鹿児島県台湾蓬莱会、日本中華聯合總会青年部 後援:台北駐福岡経済文化辦事處、台湾貿易センター福岡事務所)
講師は台湾財政部国際財政司司長 宋秀玲氏と香港・華南・台湾等における日系企業へのサポートに豊富な経験を持つ奥田健士公認会計士の二人で、約40人の聴衆に対して協定の内容や事例を丁寧に説明し、質疑応答を行った。
開会に先立って挨拶に立った台北駐福岡経済文化辦事處の戎義俊處長(総領事)は「台湾は距離が近いだけでなく世界一の親日国であり、国交が無いにも拘らず年間600万人もの人が両国を往来している。これに加えて租税協定が適用されるようになれば、両国の経済面での障壁はますます低くなる。この協定をきっかけに台湾への投資を増やし、台湾が進めている新南向政策を一緒に進めることで、日本企業の皆さんに多くのメリットを享受して頂けるものと確信している」と述べた。
このセミナーのためにわざわざ本国から駆け付けた台湾財政部国際財政司の宋秀玲司長は、10年にわたって交渉を続けてきた日台租税協定がいよいよ来年1月から適用開始となることについて感慨を表明するとともに、その内容と節税以外に日本企業が受ける様々なメリットを丁寧に説明した。
その中で台湾への投資が東南アジアのみならず、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリアなどを含む世界へ飛躍する足掛かりを作るものであること。更に中国本土と台湾との様々なレベルでの強い結びつきを考えれば、政治的に安定し、価値観を共有する台湾を経由することが日本企業の対中ビジネスのベストな選択であることなどを強調した。
次いで説明に立った奥田健士氏は、公認会計士らしく、具体的な数字を挙げながら台湾における会社の設立から消費税の取り扱い、決算申告、課税方法などが租税協定でどう変わるか。更に現地法人設立と支店開設維持のメリット・デメリット比較などをケーススタディ的に解説した。
その後の質疑応答において、台湾市場の有望さを示すものとして、現状においても台湾に進出している日本企業の80%が黒字であることが報告され、二重課税排除等をもたらす今回の租税協定適用が更に台湾市場の魅力を増すであろうことを納得した。
また、台湾経由の中国市場開拓や世界市場開拓を参加者が具体的なシナリオとして思い描くことが出来る有意義なセミナーとなり、散会した。