台湾カルチャーミーティング2017の第5回「小吃(屋台料理)から見る戦後台湾食文化のアイデンティティ-~台湾食文化の発展と多様性~」が9月8日、台湾文化センターで開催され、台湾の著名漫画家で、長年テレビコメンテーターとして活躍した魚夫氏がゲストに招かれた。魚夫氏は、自身の書いたイラストを交えながらトークし、台湾食文化を来場者に伝えた。
現在台湾は屋台料理をはじめ、上海料理や四川料理、山東料理など、バラエティ豊富な食文化となっている。これは、内戦によって敗れた約600万人の中国国民党らが台湾に来た事により、本来ある台湾料理と中国大陸各地方の料理が融合し、独特の台湾料理が出来上がったという。
魚夫氏は、現在台湾で美食の定番と言われている“燒餅油條(台湾揚げパン)”や“四川牛肉麺”、“モンゴル焼肉”、などを挙げ、「これらは台湾人が、中国大陸の各地方料理を自分風にアレンジし、独特の味を作り出しているもの」とし、「実は中国大陸に行ってもこれらを食べる事ができない」と強調した時には、来場者は驚きで声も上がるほどだった。
また、魚夫氏は、“蔥抓餅(ネギパイ)”について面白いエピソードがあると話した。ある台湾人が、中国大陸山東省に行った際、蔥抓餅のレシピを持って帰り、台湾の屋台で販売していたが、実はレシピとは異なる失敗作だったそうだ。しかし、あるアメリカ人が毎日通って食べに訪れ、のちにそのアメリカ人はニューヨークタイムズ(アメリカ新聞社)の記者だった事が発覚。後日発行された新聞に、「アジアで一番美味しい台湾料理」と蔥抓餅の紹介がされた事により、今の蔥抓餅が台湾で普及したという。
一方、近年の台湾では、日本食文化が発展している。この理由に対し魚夫氏は、「日本の食文化は進歩や多様化が速く、盛り付けにおいても工夫がされ、フォトジェニックな料理が沢山あるため、台湾人に好まれる」と主張。台湾人は日本統治時代、“生”で食べる習慣がないなど様々な理由から、日本食を受け入れなかったが、現在は時代の流れにより、台湾人食文化も変化しているという。
魚夫氏は、80年代後半より台湾の新聞社「中国時報」や「自立晩報」などで漫画コラムを連載したほか、近年では台湾各地の美食をめぐり、その歴史と店の物語を丹念に記録し、鮮やかなイラストとともにまとめた本も刊行している。魚夫氏がこれまで数多くの美食のイラストを描いてきたのは、美味しさを表現したいわけではなく、食の背景から、「台湾の食文化とは何なのか」を若い世代に伝えるためである。
なお、同10日にも、魚夫氏によるカルチャーミーティング2017が開催予定である。「日本統治時代の台北城内建築と懐かしい味」をテーマに、自身の建築イラストを用いて全く違った視点でトークする。
(2017/9/10)