5月25日、福岡工業大学(福岡市東区:下村輝夫学長)で戎義俊・台北駐福岡経済文化辦事處處長(総領事)が「日本精神-日台を結ぶ目に見えない絆-」をテーマに特別講義を行った。
講義は社会環境学部・中川智治教授の一年生の授業の一環として行われたもので、学生ら180人が熱心に聴講した。
中川教授は、福岡工業大学が昨年台湾・高雄市の国立高雄第一科技大学と学術交流協定を結んだこと。その時に戎義俊総領事に多大な尽力をいただいたことを紹介し、今日の講義をきっかけに同大学はもちろん、我が国と深い関わりを持つ台湾について学んで欲しいと述べた。
戎総領事はまず、福岡工業大学と高雄第一科技大学との学術交流実現を祝し、更に毎年の国慶節祝賀会で日台両国の国歌吹奏などをお願いしている吹奏楽部の技術レベルが高い評価を得ていることなど、同大学と台湾との関係から話を始めた。
冒頭、工業大学での講義にふさわしく「人工知能(AI)は人を幸せにするか?」というサブテーマで、次世代の「5G通信」を取り上げ、これが介護などへのロボットの利用、自動運転の普及、ビッグデータ解析を利用した医療の発展などに繋がる期待に触れ、日本が「第4次産業革命」に成功すれば、少子高齢化という国難をも乗り越えることが出来るだろうと述べた。
また、ネット利用における中傷の拡大などに歯止めがかからず、手口も巧妙化している問題については、権利の侵害に素早く、毅然とした対応をとることが最重要であり、健全なネット社会の発展をもたらすものであろうとの見解を述べた。
次いで、台湾そのものに関する若い人の理解を助けるために、日本からのアクセス、政治体制、発展を続ける産業、魅力的な観光などの「台湾豆知識」を披露した後、この日のメインテーマである「日本精神-日台を結ぶ目に見えない絆-」に進んだ。
ここでは、正式な国交関係を持たないにもかかわらず、日台両国の人々の行き来が年間650万人にも達し、世論調査で「好きな国の第一は日本」と答え、7年前の東北大震災の時に、250億円という世界一の義援金を提供した背景などについて様々なデータとエピソードを示しながら熱弁をふるった。
すなわち、日本統治の50年間に日本が台湾に持ち込んだのは、武士道精神に基づく「公」の心であり、台湾人はこれを「日本精神(ジップンチェンシン)」と呼んで誇りに思っていること。日本統治時代に多くの日本人が自らの犠牲を顧みずに道路、鉄道、ダム、都市施設などのインフラを整備し、教育システムや医療システムを作ってくれたことに多くの台湾人が感謝していること。国交のない穴を姉妹都市提携など地方同士の交流が埋めていること。日本統治時代に基盤を置く「日本語世代」と「湾生」のお付合いを高校生の修学旅行などで、若い世代が引き継ぎつつあること。東アジアで初めての国立故宮博物院特別展が東京と九州で開催されたこと。これらのことから、台湾から日本への観光客は単なる物見遊山ではなく、日本に心の故郷を訪ねているのではないかと推察していること。などである。
そして日本が再び武士道の精神を取り戻し、リーダーとなって、台湾と手を携えてアジアと世界の安定と発展を牽引する日が来ることを心より願っていると締めくくった。