毎年博多祇園山笠に参加している台湾からの留学生が、今年も元気いっぱい福岡の街を駆け抜けた。
山笠参加12年目となる今年は金柏諺、黄亭維、詹孟儒、呂岳、李建毅氏の5氏が参加。このうち金柏諺氏は昨年に続いて2度目だが、他の4人は今年が初参加。山笠は800年の歴史と伝統を誇るだけに、しきたりや決め事も多く、全員が初参加では「流れ」と称する運営単位の中で決められた役割をスムーズに果たすことが出来ない。そこで彼らを受け入れてくれた「土居流れ」の世話役と留学生会との話し合いで、毎年の参加者のうち1人以上は2年以上継続して参加したものが後輩を指導するなどの独自ルールを作ってきた。また人数が多すぎると基本的なことが正確に理解できないため、一度の参加人数は5人までと絞っている。
過去に山笠を体験した留学生で、日本で就職した人の中には、山笠に参加するためにわざわざ有給休暇を取って福岡に戻り、後輩を応援する人もいるという。世話役の方でも経験者の応援を歓迎している。また山笠に参加した留学生のOBと日本側の世話役は「オッショイ会」という同窓会を作り、何かと連絡を取り合って交流しているが、呼びかけると、多い時には30人以上も集まることがあるという。
初年度から留学生の世話役を続ける嶋田正明氏は、言葉の違いでうまく意思疎通できなかったり、福岡の地理を覚えていない留学生にイベントごとの待合せ場所を教えるのに苦労したこともあったというが、組織の上下関係や与えられた役割の理解などは思った以上にスムーズだったという。これは彼らの多くが軍隊経験者だったためもあるだろうと振り返えっている。
参加当初は締め込み(ふんどし)姿になることを恥ずかしがった留学生達もすぐに慣れて周囲に溶け込み、流れの幹部からも「今の日本人にはない気遣いを持っている」とか、「言葉は不自由でも、何にでも積極的に取り組もうとする姿勢に感心する」などと言われるようになった。その結果、今では恒例になった留学生の参加を心待ちにしている者も多く、着実な日台交流が進んでいるようだ。
12年前に山笠に参加した留学生が結婚式を挙げた時には、オッショイ会のメンバーが家族とともに台北に招待され、式の最後には山笠の衣装で「博多祝い唄」を歌い、「博多手一本」で締めくくり、大いに盛り上がったという。
世話役の皆さんも、今では彼らの受け入れに格別に気を遣うことやトラブルは無く、毎年どんな学生が来るかを楽しみにしているという。ただ、勇壮で早い動きが要求される祭りだけに、怪我をする可能性が無いとは言えないので、障害保険には加入しているそうだ。
留学生の方でも、「流れに参加している子供からお年寄りからまでが助け合いながら全力で走るのを見て感動した。また直接の参加者だけでなく、福岡の街全体が心を一つに溶け合っていることは素晴らしい。自分達は山笠を通じて、多くの方々と知り合い、日本文化の一端を学ぶことができた。このような交流こそが台湾と九州、台湾と日本の理解や友情を深めるものだと思う。これからも後輩に積極的な参加を呼び掛けたい」と話しているうちに点呼が掛かり、そそくさと割り当てられた配置に向かった。
ビデオは本番を翌日に控えた「土居流れ」の流れ舁き(この中に彼らの姿が見つかるかも!)