近年、大規模な地震や異常気象による集中豪雨が世界のあちこちで多発している。ことに日本と台湾は大規模な自然災害に見舞われることが多く、そのつど相互に救援隊を派遣したり、義援金を贈って復興を助けるなど「善の循環」が出来上っている。
災害対応の基本として「地震などの発生時には自分が怪我をしないことによって人を助ける側に立つことが最も大切」いう認識を広め、そのための具体的な方法を提唱している日本のグループが台湾の大学4カ所で講演をすることになり、出発前の11月26日、中心メンバーの白石葉子氏(防災士)と水野雅浩氏(健康マネジメントスクール)などが福岡辦事處を訪れて防災講習を行った。またこの機会に併せて、毎年1回の恒例行事となっている辦事處の防災対策会議が開かれた。
水野氏は、防災の順番は ①自分が助かること、②家族を助けること、③地域を助けること。つまり、助ける側にまわって自ら地域を守る姿勢を持つことが重要であると説き、白石氏はそのためには、まず自分の頭と足を守って怪我をせずに自由に行動できる状況を作り出すことだと述べた。そしてその具体的な方法として、寝室の枕元に、靴、懐中電灯、軍手、メガネを詰め込んだダンボール箱を用意することを提唱した。これはいわば『命の箱』であり、5分程度の時間で用意できるにも拘らず、①時間がない、②やり方が分からない、③面倒だ、④お金を使いたくない、⑤地震なんて来ない、⑥諦めている、などの理由で用意していない人が多い状況を嘆いた。
「自分と大切な人のために、今日帰宅したら出来るだけ早く『命の箱』を用意して下さい」と説く白石氏の話にうなずく處員を前に、健康マネジメントスクールの水野雅浩氏が「震災時に大切なのは、身体機能が落ち、ストレスが増大する避難所での健康マネジメント」と話し、『10秒ストレッチ』と、助かった者が困っている人に声をかける『リーダーシップの必要性』を強調した。
白石、水野両氏の講演の後、マグニチュード7クラスの地震が発生したという想定のもとに、洪臨梂総務部長が緊急会議の議長役を務め、情報収集、Web対応、電話対応、交通手段の確保、パスポート紛失者などへの対処、メディア対応などの責任者から状況報告を受け、指示を与えるシミュレーションを行った。また辦事處内の救急用品が揃っているかどうかを陳忠正處長に報告しながら確認した。
最後に、白石、水野両講師から、未経験の災害に備えるためには訓練しかないこと。地震が起きると1割の人しか冷静になれないため、みんなでカバーしなければならないこと。凍りついて動けない人には肩を叩いたり手を握るなど体に触れてあげること。パニックになっている人には「大丈夫だ。必ず助かる」と言って落ち着かせることなどが有効、とのアドバイスをもらって会議を終了した。