中国の文化観光省が7月31日に発表した、「8月1日より中国人の台湾への個人旅行の許可証の停止」を巡り、台湾の対中国政策を所管する大陸委員会は「一方的だ」として強い抗議と非難を表明した。しかし中国側は「現在の両岸(台湾と中国)関係を考慮して」の決定とし、さらに、「一つの中国」を前提とした「92年コンセンサス」を受け入れていない蔡英文政権に対する圧力の強化とみられる。
中国が台湾への個人旅行を制限するのは初めて。台湾では来年1月に総統及び立法委員選挙を控えている。中国の旅行業者は、台湾で重要な選挙があるたびに「台湾旅行を制限する措置を取ってきた」とし、今回は措置の実施が「特に早い」との見解を示した。これまでは選挙の2~3カ月前が多かったという。
中国は2011年6月、北京や上海などを対象に台湾への個人旅行を解禁。以来、解禁都市を徐々に増やし、これまで47都市で認めていた。台湾内政部移民署の統計によると、台湾を訪れた中国人個人旅行客数はここ数年は年間100万人台で推移しており、今年は6月末までで63万人超が訪れていた。
なお、台湾の与党民進党の李明俐氏(広報担当)は8月1日、台湾への個人旅行制限の発表を受け、「両岸交流を一方的に分断する元凶は中国政府」と批判。蔡政権発足の2016年以降、「中国は旅行客を使って民進党政権を脅し続けている」と表した。また、台湾交通部観光局は、中国当局の決定に対し「遺憾だ」とし、許可証発行の早期再開を願うとの立場を示した。