台湾総統選挙に出馬するとみられていた精密機器最大手の鴻海精密工業の郭台銘前会長が9月17日(現地時間16日深夜)、立候補を見送ると表明した。これにより、2020年1月に実施される台湾総統選は、再選を目指す民進党の現職の蔡英文総統と最大野党国民党の韓国瑜(高雄市長)の事実上の一騎打ちの構図となった。
郭氏はこれまで、先の7月に行われた国民党の党内予備選で韓氏に敗北しており、この結果を受けて9月上旬に一部のメディアに対し「出馬を検討している」とし、さらに同12日、同党に離党届を提出。無所属での出馬を準備していた。しかし一変して出馬を断念。郭氏は声明で「失望させてしまい、申し訳ない」と謝罪。「総統選に出馬しないからといって、政治に関わることを諦めたわけではない」とし、郭氏の陣営も「総合的に検討した結果、出馬を見送ることにした」と発表した。
これにより、来年の台湾総統選挙は事実上民進党対国民党となったが、一方で、無所属からの出馬は断念したものの、残る政党からの立候補はまだ否定できない。11月18日から同22日までに選挙立候補者の登録申請の受付に間に合えば出馬は可能で、野党「親民党」に鞍替えしての出馬も懸念される。台湾の長者番付第一位(米フォーブス誌発表)である郭台銘氏だけに、残されたチャンスを生かす可能性はある。まだ予断を許さない台湾総統選とみられる。