世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は(スイス・ジュネーブ=現地時間4月8日)の記者会見で、「過去3カ月にわたり台湾から人身攻撃を受けた」と述べた。台湾外交部は翌9日、報道資料で「強い不満、深い遺憾」を示し、「断固として抗議する」と表明した。
テ氏は、WHO本部での定例記者会見で、「2、3カ月以上にわたり人種差別的な人身攻撃が続いている」と強調し、「3カ月前、この攻撃は台湾から受けた」と公に名指しした。さらに、台湾の外交部が中心に立ってテドロス氏を批判したとも主張した。
これに対し台湾外交部は「台湾は成熟した素養の高い先進民主主義国家であり、WHO事務局長本人に対する人身攻撃を人々に促すことは絶対になく、ましては人種差別的言論を発表することはありえない」と強調。また、テドロス氏を批判する言論は「いずれも中華民国台湾外交部とは無関係であり、中華民国台湾外交部が操れるものではない」と弁明した。さらに、テドロス氏が事実確認をせずに、理由なく台湾に対して事実とは異なる非難をし、台湾の政府や人々を深く傷つけたとして、「この中傷行為は極めて無責任。台湾政府はテドロス氏に根拠なき非難の訂正や即時釈明、台湾への謝罪を求める」と要求した。
台湾批判のWHO事務局長を「招きたい」~蔡総統
WHOのテドロス事務局長が4月8日(現地日時)に会見の席上で「台湾から人身攻撃を受けた」と名指した事に対し、台湾蔡英文総統は4月9日、自身のフェイスブックなどを通じて「強烈な抗議」を表した。また、「この機会を借りて、テドロス氏を台湾に招きたい」との考えを示し、「差別され孤立した台湾の人々がいかに国際社会に貢献してきたか、身をもって感じてほしい」と呼び掛けた。
さらに蔡総統は、いかなる形の差別にも反対する台湾の立場を示した上で、「われわれは長期にわたって国際組織から排除されており、差別や孤立の感覚は誰よりも理解している」と強調。その上で、台湾が国を挙げて新型コロナウイルス対策に当たり、その成果が世界から注目された事に言及。感染が深刻な国の医療従事者にマスクなどの医療物資を寄贈した行為にも触れ、「WHOが政治的理由で台湾を除外したとしても、われわれは国際社会のメンバーとしての責任を負う」姿勢を示し、その志に国や人種による違いは一切ないことを強く訴えた。
このほか、テ氏が中国寄りの姿勢ではなく台湾を受け入れれば、「防疫に取り組む台湾の努力が理解でき、不公平な扱いを受けているのは台湾の人々だということが分かるはず。台湾が参加して初めて、WHOのパズルが完成すると信じている」と強調した。