台湾の学生ゴルファーに夢を与えたい!

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今年のポスターの前に立つ忍田 勉社長

電材卸の九州最大手である株式会社カンサイホ-ルディングスが高校、大学生を対象に実施している「カンサイカップ・オールジャパン男子学生トーナメント」ゴルフ大会に2019年から台湾の学生が招待され、活躍している。

今年も9月30日、10月1日の2日間、福岡県・筑紫ヶ丘ゴルフクラブで開催される大会に「コロナが収束して選手の日本への入国が許される状況になれば」という条件で、台湾選手を招待することが決まった。

この大会を主催するカンサイホ-ルディングスの忍田勉社長(写真)に、大会の狙いや台湾の学生を招待するに至った経緯・意義について話を聞いた。

記者:昨年、一昨年と台湾から参加した選手は優秀な成績を収めていますね。

忍田:はい。2019年は台湾の高校、大学から10人の学生がエントリーしましたが、その中の3人がベストテンに入りました。2020年は新型コロナの影響もあって台湾からの派遣が見送られ、日本経済大学に留学中の呉心瑋選手のみの参加となりましたが、彼が大会始まって以来のホールインワンを達成するなど、台湾選手の存在感を印象付けました。

記者:2018年の第5回大会まではオールジャパンの名前の通り、日本国内の学生だけの大会でした。2019年から台湾の選手を招待するようになったきっかけは何でしたか?

忍田:この大会を企画運営してくれている九州学生ゴルフ連盟の比田勝真一常務理事のお勧めと駐福岡台湾総領事館の陳忠正総領事の熱意です。第5回までやってきて、ちょうど国際化を考える時かも知れないと思っていたところでした。

この大会はもともと上位3選手を「オーストラリアPGAツアー・オープンゴルフトーナメント」に派遣するなど、日本の高校・大学生に国際舞台を経験するチャンスを与えてきましたが、その前に行われる試合でも海外の選手と切磋琢磨できれば大いに刺激になるだろうと思っていました。いま日本の若い人は「内弁慶」というか、海外留学も含めて外へ出て行きたがらない風潮にありますが、若いうちに外を見る、或いは外国の人と接することは、短時間であっても良い勉強になると思います。競技を通じて日本と台湾の学生が接することもそういった経験になると思います。今年の大会に台湾からの派遣が可能となり、またコロナが収束しているようなら、試合が終わった後に両国の学生が交流する場も作ってみたいと考えています。

2019年大会で大活躍した台湾の選手たち

記者:もし今年の大会で台湾の選手が上位3人の中に入った場合には、彼らをオーストラリアPGAツアーに出場させることは可能でしょうか?

忍田:現在の契約は「日本人枠3人」となっているため、難しいかも知れませんが、これを「カンサイカップ枠3人」に変更できるかどうか交渉してみたいと考えています。比田勝さん、よろしくお願いします。

比田勝:打診してみます。

記者:2019年に10人の台湾選手を受け入れた時の印象はいかがでしたか?

忍田彼らのパワーや技術も素晴らしいと思いましたが、それ以上に礼儀正しさに感心しました。ゴルフはもともとジェントルマンのスポーツであり、ゴルフにまともに向き合っている人、特に学生は日本人も礼儀正しいのですが、台湾の学生のマナーはそれ以上だったと思います。挨拶や礼儀もしっかりしており、日本人が見習わなければならないと思いました。私は彼らに非常に良い印象を持っています。ビジネスの世界ではゴルフを遊びや接待の手段と捉える人が多いのですが、大学・高校のクラブに所属する学生はゴルフを人生を賭けたスポーツと捉えています。今年のマスターズで松山英樹選手のキャディーを務めた早藤将太さんが優勝決定後ポールをホールに戻した後、コースに向かって一礼して世界の人々から称賛されましたが、このようなマナーもこれからの若い人に見習って欲しいと思っています。

記者:忍田社長は若い人を育てたいというお気持ちが非常に強いようですね。もともとカンサイカップは、いつ、どんなきっかけでスタートしたのでしょうか?

忍田:きっかけは会社の60周年記念に何か社会貢献になることをしたいと考えたことでした。福岡、博多、九州に対するお礼というか恩返しのイベントですね。その時、九州学生ゴルフ連盟の比田勝常務理事と知り合う機会があり、当時低迷していた男子のゴルフ界を盛り立てるために、大学・高校のクラブ活動で頑張る若い選手が活躍するための場を作ってはどうか、という話になりました。

当時はゴルフのテレビ中継を見ていても、男子はベテランの名前ばかりが出てきて新鮮味がありませんでした。それだけ若い人が育っていない時代だったのだと思います。私は会社経営でも若い社員をどんどん表に出してチャレンジさせ、仮にうまく行かなければ、その責任は社長である私自身が取ればいいというやり方をしてきたので、比田勝常務理事の「高校・大学生の時から活躍できる場を作り、やがて日本のゴルフ界を背負って立つ人材を育てたい」という考えとぴったり合いました。

忍田社長(左)と比田勝常務理事

記者:今年が第8回ですが、今後の継続については、どうお考えでしょうか?

忍田:私の座右の銘の1つは「継続は力」です。毎年この時期にカンサイカップがある、そこに出たい、ということが選手の努力の源泉となり、安心感でもあると思います。台湾の学生にとっても、秋には日本のカンサイカップに出るチャンスがあるということが励みとなり、国際交流にもつながるのだと思います。当社にとっても、カンサイカップを続けて若い人を育て、社会貢献するということは、毎年の大きい目標なのです。私自身にもこれを続けることが仕事の励みになっています。仮に苦しい時代が来てもこの目標を達成したいと考えています。大会が開かれるかどうか分からないようでは周りの人も困ると思いますので、リスクマネージメントとして「個別指導塾スタンダード」さんと「スポーツスクール・リーフラス」さんに協賛していただき、大会が途絶えることのないようにしています。どちらも若い人を応援する会社ですので。

記者:最後に、スポーツとしてのゴルフの将来性についてはどのようにお考えでしょうか?

忍田:多くのスポーツの中で、ゴルフは歳をとってもできる数少ないスポーツだと思っています。「生涯スポーツ」として今後も愛され続けると思います。コロナ禍でいろいろな会合や催しが制約を受けざるを得ない中、ゴルフは安全なスポーツと評価され、予約が取りにくい状態のゴルフ場もあるように聞いています。ただ、ゴルフ場の維持にはお金がかかりますので、バブル時代のようにゴルフ場が増えることはないでしょうが。

それはそれとして、生涯スポーツとしてのゴルフを盛り立てていくためにも、若い学生を応援し、台湾をはじめとする多くの国々との交流にもつなげていきたいと考えています。

記者:有り難うございました。