アジア歴訪中の米ペロシ下院議長は2日、専用機で台湾を訪問した。マレーシアの訪問を終えて現地の午後3時すぎ出発し、紛争地域の南シナ海の経由を避けてインドネシアを通過し、約7時間の飛行時間で台湾を到着。空港でペロシ氏を歓迎したのは台湾外交部長(外務相)吳釗燮氏と、米国対台湾窓口AITの長官サンドラ・オウドカーク氏だった。現職下院議長の台湾訪問は、1997年のギングリッチ氏以来25年ぶりだ。
ペロシ氏は到着直後に自らのツイッターを投稿し「台湾の活力ある民主主義を支援するという、アメリカの揺るぎない関与を示すものだ」と声名を発表した。
ペロシ氏は3日の早朝から立法院の訪問をはじめ、台湾の与野党立法委員と交流した。游錫堃立法院長はペロシ氏と会見する予定だったが、新型コロナを感染したことで断念。代わりに蔡其昌副院長が会見し、ペロシ氏は立法院の記者会見で台湾訪問の目的について「台湾は世界有数の民主主義国家であり、新型コロナ対策もしっかりしている」と述べ「今回の訪問を通じて、米国は党派を問わず台湾を支持していることを伝えたい」と説明した。
立法院の訪問が終わり、ペロシ氏は総統府に訪ねて蔡英文総統と会談した。蔡総統は国家に大きく貢献した非公務員や外国人に贈る勲章で最高位に当たる「特種大綬卿雲勲章」をペロシ氏に授与した。
蔡総統はペロシ氏の訪問と米国の支持に感謝の意を示したほか、まだ続いているロシアのウクライナ侵攻を言及し、もし台湾が侵略されたら東アジア太平洋地域には大きな衝撃をもたらすことを指摘した。しかし台湾は中国の軍事圧力に屈しない、民主主義の防衛線を守るという考えを述べた。
ペロシ氏は蔡総統の発言に対し43年前に成立した台湾関係法を例にし「米国は台湾の味方だ」と示し、米国は必ず台湾との約束を破棄せず、米国と台湾間の固い結束を世間に示したいと語った。
その後、ペロシ氏は陳菊監察院長を伴って国家人権博物館を参観し、台湾の民主化運動の歴史を習った。外交部の動画によるとペロシ氏は「私たちも台湾のことを愛している」と話した。
3日の夕方、ペロシ氏は専用機で台湾を離れた。
中国「ペロシ氏の訪問に代償を払う」と反発、軍事と経済両方から圧力
一方中国は今回の訪問に対し激しい反発を示した。到着の直前に官営メディア環球時報の胡錫進元編集長がツイッターで「ペロシ氏がもし台湾に向かうならその飛行機を撃ち落とせ」と恫喝し、ツイッターにブロックされた。
中国外交部と対台湾弁公室は記者会見で「米国は両岸の対立を煽る」や「もし衝突になればすべては米国の責任だ」と非難し、Weibo(中国のツイッター)では反米の愛国主義が広がっている。
ペロシ氏が台湾に着いた翌日、中国海関総署は報復措置として台湾産のかんきつ類の果物やタチウオ、アジの輸入を取りやめると発表した。同国の商務部(商務省)も同日、台湾への天然砂の輸出を一時停止すると発表した。台湾メディアによると、台湾が中国に輸出する3200種類の商品のうち、約2600種が一時停止となっている。
また中国軍方も8月4日からの3日間、台湾周辺海空域で実弾演習を行うと発表した。これを受け、台湾国防部は臨時記者会見を開き「中国の演習は台湾の主権を著しく傷害している」と強く反発した。