「台湾史研究の重要さを理解してくれたことがうれしい」 外務大臣表彰の檜山幸夫・中京大名誉教授

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講義する檜山幸夫・中京大学名誉教授

 外務省は、2022年度の外務大臣表彰を発表した。日本と諸外国の友好親善関係の増進に貢献があった個人、団体を表彰するもので、本年度は197人の個人、48の団体が表彰に選ばれた。その中で台湾関連では、個人は歌手のジュディ・オングさん、中京大学(名古屋市)の檜山幸夫名誉教授の2人、団体は社団法人台湾応用日語学会(高雄市)、台日文化経済協会(台北市)、中華文化総会(台北市)、社団法人台中市白冷圳水流域発展協会(台中市)の台湾で活動する4団体が、それぞれ表彰の栄誉に輝いた。 

 個人の表彰理由は、オングさんは「日本と台湾の相互理解の促進」、檜山さんは「台湾における日本研究の推進」にそれぞれ功績があったと説明されている。 

 檜山さんは中京大学名誉教授、同大学の図書館長、先端共同研究機構長、社会科学研究所長などを歴任し、同研究所が進める「日本の台湾統治史」についての研究プロジェクトの中枢を担ってきた。 

 台湾には日本統治時代(1895~1945年)に日本語で書かれた行政文書である「台湾総督府文書」が残され、同研究所は台湾側の国史館台湾文献館(旧・台湾省文献委員会)と協定を結び、同文書の目録編纂事業を進めてきた。同文書には総督府の政策決定から駐在所の報告書まで膨大な量があり、台湾における日本統治時代の政治、社会の実態を具体的に伝えている。檜山さんらは同文書を研究、整理して1993年に「台湾総督府文書目録」第1巻を刊行したのを皮切りに、刊行を続け、2022年段階で第30巻(大正4年=1915年)まで来ている。 

第30巻まで来た台湾総督府文書目録

 また、檜山さんは「台湾総督府文書の史料学的研究」「台湾の近代と日本」「日本統治下台湾の支配と展開」「歴史のなかの日本と台湾」「台湾植民地史の研究」「台湾総督府の統治政策」など台湾研究における著作多数。こうした功績が認められ、2020年には日本台湾交流協会から表彰されている。 

 檜山さんは「日本政府(外務省)が台湾史研究の重要さを理解してくれたことがうれしい」と表彰の感想を語った。同時に、日本の多くの研究者、30以上の大学、研究所、文書館、博物館などの研究機関や、100人近くの教員、研究員、学芸員、院生、学生、台湾の研究者では台湾大学、師範大学、政治大学など4大学と中央研究院などから6人の教員、研究員がボランティア的に参加したことを指摘し、(自分一人だけの力ではなかったと)感謝の言葉を述べて、「台湾総督府文書の目録編纂と文書に関する基礎的作業や人材育成、デジタル化のための支援作業といった研究基盤の整備(研究インフラ整備)の作業を行ってきたことが評価されたのだと思います」などと話した。