台湾、日本、韓国の演劇人が九州芸文館で公演

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公演が行われた九州芸文館

台湾、日本、韓国の演劇人が中心となって作るEATI (East Asia Theater Interaction)が9月3日、4日の2日間、福岡県筑後市にある「九州芸文館」の大交流室で芥川龍之介の「藪の中」を公演した。

 九州芸文館は九州新幹線・筑後船小屋駅前に作られた施設で、芸術文化関連団体やまちづくり団体等と連携を図りながら、芸術文化・体験・交流などさまざまな事業を展開することを目的としている。

 一方EATIは東アジアの演劇人が、舞台創作を通して相互の芸術・文化を深く享受し、国家の理念と対立を超えた和合と共存の道を創造していくことを目的として進められている国際プロジェクトであるため、今回のような国際的かつ挑戦的な演劇がここで公演されたことには、必然的な出会いだったのかも知れない。

 演劇は三部作となっており、第一部は台湾人の演出で日本と韓国の役者が演じる無言の二人劇。第二部は韓国人の演出家の作品で、AIの発する「天上の声」に日本と台湾の役者が反応するもの。第三部は日本人の演出で、琵琶の語りに合わせて韓国と台湾の役者が夫と妻の葛藤を演じた。

左から右へ 第一部、第二部、第三部のワンシーン

 小説「藪の中」自体が様々な解釈を生む余地を残すものであるうえに、演出家、役者が多国籍であるため、演劇を製作する側にも観客側にも、見た後に若干の不完全燃焼感は残るものの、他人を理解しようとして仕切れない人間のもどかしさ、周囲の強い声や脅迫感の中で何が真実か分からなくなる人間の心の弱さ、男性と女性の死生観の違い、などはある程度汲み取れたと思われる。

 終演後、観客と演出家、役者、関係スタッフとの懇談が持たれ、「この場面はこう思ったが・・・」とか「あのシーンはこうだったのか!」という交換があったが、観劇に先立って原作に触れていれば、もっと製作者の意図に近づけたのかもしれない。

観客と演出家、役者、関係スタッフとの懇談