林芳正外相は4月2日、中国の秦剛国務委員兼外相と会談した。秦氏は「台湾問題は中国の核心的利益だ」とし「日本はどのような形であれ中国の主権を損なってはならない」と、日台間の連携強化を警戒。林氏は中国側の主張に「台湾海峡の平和と安定は重要だ」と返答した。
台湾外交部は同日、林氏の発言について報道資料で「高い評価と感謝」と表明。「日台間は自由と民主主義、人権、法治など基本的価値観を共有している友人だ。これから台湾は日本などの友人と共に、インド太平洋地域の平和と安定、繁栄を守っていく」と台湾側の立場を明確にした。
外相会談では台湾問題のほか、林氏は、3月に北京で拘束されたアステラス製薬社員の日本人男性について中国側を抗議して「早期解放」を求めた。これに対し、秦氏は「我が国の法律により対処する」と日本の要求を却下した一方、日本が米国の要請を受けて中国を念頭に先端半導体製造装置の輸出規制を強化する方針を決めたことについて「悪人の手先になるべきではない」と日米連携をけん制した。
また、5月に広島で開催される主要7カ国(G7)首脳会議について「日本はG7の一員だが、それ以上にアジアの一員だ。会議を地域の平和と安定に資する方向に導くべきだ」と訴え、G7の共同声明に中国批判を盛り込まないよう要求した。
なお、日中両国は会談で「建設的かつ安定的な日中関係」の構築に一致し、また日韓関係の悪化で2019年以来行われていない日中韓3カ国の首脳会談を再開に向けて進めることでも合意したが、日本メディアは「米中対立が深刻化する中で、この会談でも立場の違いが浮き彫りになった」と指摘した。