熊本県菊陽町と新竹県寶山郷が友好交流協定を締結

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菊陽町、寶山郷、福岡領事館の関係者たち

世界トップクラスの半導体製造会社TSMC(台湾積体電路製造)の工場建設が進む熊本県菊陽町(吉本孝寿町長)は、7月18日に同町役場に台湾の新竹県寶山郷(邱振瑋郷長)の代表団11人を迎え、友好交流協定を結んだ。

寶山郷は台湾・北西部にあり、人口約14,000人。農業主体の町に同じTSMCの工場が建設されたところが菊陽町と共通しており、2022年春ごろから交流が始まり、この日協定を締結するに至った。

今後、両地域は教育、産業、経済、文化、スポーツ、観光等の分野で交流を促進する。また水の保全や交通といったインフラの課題についても情報交換を進めるとしている。

協定書調印のあと挨拶に立った菊陽町の吉本町長は「2つの地域は、ともに自然豊かで歴史ある地域であり、田園風景を残しつつ最先端技術を支えていく役割を担っている。この協定調印が2つの町のみならず、熊本県と台湾、日本と台湾の連携に繋がることを願っている」と述べた。

一方、寶山郷の邱郷長は「今日は元々用意していた挨拶のほとんどを吉本町長に取られてしまった」と苦笑いしながら「寶山郷は菊陽町と同様に豊かな農業を持っている中に新竹テクノパークの一環として国家レベルのハイテク工場群の建設が進んでいる。住民のほとんどは客家人だが、その気質はおもてなしの心と勤勉さにある。自分たちの経験を共有し、菊陽町の皆さんの知恵を学べば両地域は大いに発展するものと期待している。菊陽町は必ず日本一の町になるだろうし、寶山郷も台湾一になると信じている」とあいさつ。

更にそれを受けて吉本町長が「お互いに半導体産業を支える自治体として、文化や経済を理解し、交流を深めたい」と応じた。

それらのやり取りは同時通訳されるとともに、台湾のVMFi Inc(ヴイエムーファイ社)が開発した5Gのリアルタイム翻訳サービスで会場内のモニターに表示され、最先端半導体工場が立地する自治体同士の交流協定締結式に花を添えるものとなった。

調印した協定書を披露する吉本町長(左)と邱郷長(右)

交流のきっかけを作った台北駐福岡経済文化弁事処(駐福岡・台湾領事館)の陳銘俊総領事は「この協定は単に2つの町の交流にとどまらず日本と台湾の関係をつなぐものである。携帯電話からミサイル、宇宙船にまで使われる半導体は、地域の経済発展を担う原動力であるのみならず、世界の民主主義陣営の安全保障にも深くかかわっている。TSMCとトヨタ自動車の売上額はほぼ同じだが、企業価値(時価総額)はTSMCの方が数倍大きい。TSMCの本部がある新竹県の住民所得は首都・台北より高い。菊陽町の住民所得が東京を上回るのもそう遠くないと思っている。両地域が友好交流を深め、大いに発展することを期待している」と述べ、両地域の縁組を祝った。

祝辞を述べる陳銘俊総領事(右)