日本台湾商会連合総会と熊本県の商工会議所連合会、商工会連合会が、世界最大の半導体受 託製造企業である「TSMC(台湾積体電路製造股份有限公司)」の熊本進出を機に、さらに交流を深 めようと 8 月 28 日に熊本市内のホテルでビジネスセミナーと会員懇親会を開催した。会合には蒲島郁夫・熊本県知事、陳銘俊・駐福岡台湾総領事をはじめ、県北地域の市町村長、主催商工団体の役員やメンバーなど 107 名が集い、熱心に講演を聞き、新しい時代への対応を語り 合った。
セミナーで講演した陳銘俊総領事は、台湾に今日の発展をもたらし、親日の流れを作ったのは 1895 年~1945 年の日本統治時代に九州・山口から赴任した総督とそれを支えた人々のおかげと して、次のような人々の例を挙げた。
⑴ 熊本出身の教育者
統治の初期に命を張って教育の理想を貫いた天才教育者・・・平井数馬 常に児童・生徒の側に立って教育に当たった「大甲の聖人」・・・志賀哲太郎 100 歳を超えてなお台湾から教え子が訪ねて来ていた・・・高木波恵
⑵ 鉄道、道路、発電、農業用水などのインフラを整備し、産業振興を図るとともに戸籍、裁判、 高等教育などの制度を改革・整備した福岡出身の総督・・・明石元二郎
⑶ 台湾工業化の契機と言われる日月潭水力発電所を完成させるために外債を発行して資金調 達した大分出身の大蔵大臣・・・井上準之助
これらの人々に共通するのは台湾に対する愛情であり、日本統治前に 2%に満たなかった女性の 識字率が格段にアップするなど、今日の台湾女性の活躍に繋がる道をひらいた。 また台湾から毎年人口 2,300 万人の 1/4 に当たる人々が来日するほどの親日国家となる礎を築く基となった。
九州、山口の人々の「愛」がなければ、台湾は周りの植民地支配を受けた国々と似たような「反日 国家」になっていたかも知れない。しかしそうはならず地震、コロナ、風水害、台風など、困難な問 題が起きるたびに両国は助けあっている。台湾と日本は、もはや単なる「友達」を超え、「家族であり兄弟である」と言って良いだろう。
熊本に進出する TSMC は 2024 年末には製造・出荷を開始し、九州と台湾はこれから一体化が加 速することになる。第 2 工場も決定したし、多くの関連企業も立地するだろう。熊本は今後世界の民 主国家の半導体のサプライチェーンの重責を担って日本の製造業の牽引車になる。これまで停滞 が指摘されていた日本経済は、今後 速いスピードで伸びていくに違いない。
皆様には今回のチャンスをぜひ生かしていただきたいと思っている。そこで重要なのは「スピード感」 である。TSMC の決断と実行のスピードは速い。アッという間に出遅れてしまう可能性もあるので、こ のチャンスを逃さないことを期待する。
もう一つここで提案したいことがある。それは熊本に「台湾街」を作ることだ。
横浜、神戸、長崎にある中華街は「台湾街」とは違う。熊本には、TSMC とともに日本のどこにもない 「台湾街」を作るチャンスが舞い込んできたと思って欲しい。「台湾街」は TSMC の社員や関係者に サービスやノスタルジーを提供するだけではなく、新たな熊本の特色を作り出すものである。関西の人も東京の人も九州に来て熊本まで足を延ばせば台湾料理をはじめとする「台湾の文化」に触 れられる。住宅、レストラン、ホテル、病院、廟などの施設とともに、そこでの集いやイベントを通じて 台湾の文化を体験できる「台湾タウン」と言っても良い。これは私がずっと考えてきた夢の一つであり、ぜひ皆様の協力を得て実現したいと思っている。
続いて「くまモン」と一緒に登壇した蒲島知事は「くまモンと一緒にお招き頂きありがとう!」と挨拶し て会場を沸かせた後、次のように述べた。
間もなく TSMC の家族も含めて総勢 600 人が熊本に来る。2021 年 11 月に熊本進出を発表して、 2024 年 12 月には製品を出荷するというスピードで、何と早いことだろうと感心するばかりだ。すでに 台湾商会連合会の何人かの人は生活の相談を受けていると聞いているが、県でも「台湾・生活ホッ トライン」を開設した。
今月末には熊本県、熊本市、熊本日日新聞社が連携して熊本市内に台湾との交流拠点を複数カ所設けるが、これらが多角的に活用され、一層交流が深まることを期待している。今年 1 月に台湾を訪問して以来、本県と台湾の経済交流が大変盛んになった。3 月には熊本県商 工会議所連合会と熊本県商工会連合会が台湾の商業団体と、また 6 月には県の経済 5 団体が中華民国三三企業交流会などと経済交流に関する合意書を締結した。
来月にはオール熊本で取り組んできた誘致活動が実を結び、阿蘇熊本空港と台北桃園空港を結ぶ直行便が週 7 便運行されることになった。これにより台湾と熊本のアクセスが飛躍的に向上する。 県内の商工団体では、台湾の大学生のインターンシップの開始、台湾の商談会への県産品の出 品、本県から台湾への旅行商品作りなど、具体的な取り組みが進みつつあり、県としてもこれを支 援して、台湾との経済交流をしっかり支えていくことになった。今日ここに集う皆様の間でも具体的 なビジネスが生まれることを期待している。
陳総領事の講演にあった「台湾街への期待」や蒲島知事の行政面での支援方策を受けて会場のあちこちで今後の具体的なビジネスや交流を話し合う光景が繰り広げられた。