水害や地震に苦しめられながら他方で日本の半導体産業復権という大きい役割を背負う熊本県が主催する「くまもと産業復興エキスポ」が2月28日と29日の2日間に渡って同県益城町のグランメッセ熊本で開催され、県内外や台湾の企業など約270社・団体が出展した。(うち、台湾からは約30社・団体)
前週の24日にTSMC(台湾積体電路製造)の日本製造子会社であるJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)熊本第一工場の開所式が行われたこともあって、開催初日の早朝から大勢の来場者が詰めかけた。
開場に先立つオープニングセレモニーの中で蒲島郁夫知事が「エキスポを通して着実に進む災害からの創造的復興と、熊本の輝かしい未来を体感してもらいたい」と述べ、熊本工業高校のブラスバンドが花を添える中、熊本県工業連合会の田中稔彦会長や台湾・高雄市の羅達生副市長らとともにテープカットした。
出展した台湾企業の多くは現時点ではまだJASMとの取引関係が出来ているわけではないが、このエキスポを通じて、なんとか自社の製造技術をアピールして、サプライチェーンの一角に食い込むための詳しい説明書を用意し、日本留学経験者を前面に出して来場者にPRするところも見受けられた。
出展フロア内のセミナーでは台湾企業をバックアップする高雄市の羅副市長が半導体と美食を融合した同市の発展について誇らしげに語った。
2日間で10,000人を超えた来場者の多くは、半導体製造関連企業や、それらの従業員の生活を支える自治体の担当者並びに住宅や金融関連会社の営業マンが多いように見えたが、一方でこの種の展示会には殆ど見られない高校生の姿が多いのにはちょっとした以外感を覚えた。
しかし「活気づく地元・熊本での就職を促すとともに工業系の生徒には具体的に半導体の勉強もしてもらうべく約2,200人の高校生を招待した」という事務局の話を聞き、引率者の先生の姿を散見して合点がいった。
会場の多くのブースの入口や社名版の横には「学生歓迎」のプレートが掲げられ、さながら就職説明会のような雰囲気も感じられるほどであった。
ブースで具体的な仕事の内容を聞き、技術的なセミナーに参加した中には「半導体についてはこれまであまり知識がなかったが、今回大いに興味を持つことが出来た。進路の選択肢としても考えたい」と興奮気味に話す生徒もいて、主催者の狙いはズバリ的中したようだった。