自民党の苦境の中、誰が党を再生へ導けるのか──次期総裁に求められる三つの条件

0

   【讀者寄稿】石破茂首相は、党内選挙での三連敗という重圧に直面している。日米関税協定を口実に続投を模索したが、米国側が交渉の妥結を先行して発表したことで、その有力な正当化理由は瞬く間に崩れ去った。

   かつては参院選敗北を理由に安倍晋三や麻生太郎両元首相の退陣を公然と迫った石破自身が、今や進退窮まる立場に陥っており、「人には厳しく、自らには甘いのではないか」との疑念さえ生じている。

   当初、7月31日に予定されていた自民党の両院議員懇談会は、党内の圧力により急遽28日に前倒しされた。さらに、メディアが石破退陣の可能性を報じたこともあり、本人は否定しているものの、指導力の揺らぎは隠しきれない。

   加えて、複数の有力な後継候補が活発に動き始めている。高市早苗、小林鷹之、茂木敏充、小泉進次郎といった面々が、明示的あるいは暗示的に次への布石を打ち、政局はまさに水面下で大きくうねり始めている。

   だが、現在の自民党は、選挙での連敗に加え、公明党との与党連立でも両院で過半数を維持できていない。「与小野大」という構図のもと、政権運営は困難を極めている。

   今、最も問われるべきは「石破去るべきか否か」ではなく、「瓦礫の中から自民党を再生させうる人物は誰か」という一点である。

一、党内統合と超党派対話を可能にする包摂力と信頼回復の手腕

   現在の自民党は足並みがそろわず、政策調整が著しく困難になっている。さらに野党の存在感も増している中で、各派をまとめ、対立を調停できる力量がなければ、国会で重要法案を通すのもままならない。

   加えて、世論は一層保守化しており、失われた保守層の支持を取り戻すには、強力な対話と説得力のある戦略が必要だ。

   高市早苗や小林鷹之は台湾訪問歴もあり、インド太平洋戦略や日米協調を唱えており、保守層との共鳴を期待される存在である。

二、経済再建と改革に対するビジョンと実行力

   有権者にとって、経済こそが最も切実な問題である。インフレの圧力、地方経済の疲弊、若者の就職難など、未解決の課題が山積している。

   安全保障やイデオロギーのみを前面に出しても、有権者の広範な支持は得られない。次期総裁には、生活の安定を図りつつ、財政や産業構造の転換に応える、具体的かつ実行可能な経済再生策が求められる。

三、対米外交の信頼再構築、特にトランプ時代の外交リズムへの対応力

   トランプ大統領が再びアメリカのホワイトハウスに返り咲いて以来、世界中に激震が走り、その影響は全地球規模に及んでいる。

   日米関係はアジア太平洋地域の安全と安定に直結しており、日本にとって対米戦略の再構築と再定位は、まさに一刻の猶予も許されない課題である。

   高市、小林、小泉進次郎、茂木敏充、林芳正らは、米国留学や対米政策に携わった経験を持ち、国際情勢が緊張と混乱の中にあっても柔軟に対応できる資質を備えている。石破茂のような孤立型政治家よりも、米国連携への適応力は高いと見られる。

   党内では「反石破」の声が日増しに高まり、有力な競争者たちが次々と名乗りを上げる中、果たして誰が真に自民党を「脱皮」させ、新たな時代を切り拓けるのか。

   それこそが、今の日本政治にとって最も根本的な問いである。答えは、おそらく過去の失敗を振り返ることではなく、未来の方向性を明確に見据えることにある。

2025.07.26
大田一博 寄稿