~日本企業の要望をもとに「白書」を手渡す~
台北市日本工商会(渡辺一郎理事長)は11月2日、政策提言及び日本企業からの要望などをまとめた「白書」を政府・行政院建設委員会(経建会)の呉明機主任委員に手渡した。日台間の二重課税を回避するため、租税の取り決めの早期締結などを求めた。
日本商工会が台湾政府への提言や要望を盛り込んだ「白書」の提出は今年で4回目。経建会への提出は3回目となる。今年は立法院(議会)に出席した尹啓銘主任委員に代わり、呉副主任が受け取った。
渡辺理事長は「日本と中国大陸との関係は依然冷え込んだ状態が続いている。
しかし、尖閣諸島の一件があっても在台邦人や日系企業には影響がなかった。それは、台湾の皆さんが日本を信頼しており、日本を好んでいてくれるからである。また、台湾政府も中国大陸と手を組むということはなかったので、日台経済に大きな影響が出ることもなかった」と日台関係が良好に推移しているとの認識を示した。
今回の政策提案は5項目で、昨年の6項目の内容を見直し修正した。昨年の白書でも提言したECFA(中台間の経済協力枠組み協議)について、多くの日本企業が関税引き下げ品目の拡大を希望しているとして、物品・サービス貿易に関する最終合意の早期締結を要望した。商工会幹部は「多くの日本企業が、台湾市場のその先に中国市場をみているため」と説明している。また、中国以外の国・地域とのFTA(自由貿易協定)の早期締結も要望した。
また、11月9日の「日台民間投資取り決め」、今年4月の「日台特許審査ハイウエイ覚書」の署名を評価する一方、日台間の租税取り決めの早期締結に強い期待を表明した。最大の目的は二重課税の回避で、締結されれば配当、利子、ロイヤリティーへの20%の源泉徴収率が大幅に下がるため、提言は「台湾に立地する日系企業にとって非常にメリットが大きい」と指摘している。さらに、「日台間の物品の輸出入額は非常に大きい」として、関税引き下げなどのため日台経済連携協定(EPA)の早期締結も要望した。
白書ではこのほか、日本工商会会員の日系企業から寄せられた意見ももとに計44件の「個別要望事項」も盛り込んだ。「自動車買い換え促進補助金制度」「日
本酒、焼酎、琉球泡盛など酒類の関税引き下げ」など11年前の白書から続く33件に、さらに11件を加えた。また、新たなものとして日本人の台湾長期滞在ビザを現状の180日から2年ないし3年の延長要望。これは今日まで日本の経済発展を築いてきた、いわゆる「団塊の世代」が定年を迎え、これらの世代が台湾の長期滞在が可能になれば台湾の経済にとっても大きく貢献できるため、との考えからだ。
日本工商会ではこうした要望の提出だけにとどまらず、台湾政府関係者との直接対話による解決努力も継続している。