日本人ガラスアーティストが慈善イベント 台湾芸術大

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国立台湾芸術大学は2月21日、ガラスアーティストである黒木国昭氏を招き、吹きガラスのデモンストレーションを行なった。これは台湾のガラス産業の発展とアーティストの育成を願い実施されたもので、大学内のガラス工房で実際に作品を制作し、完成した作品をその場でオークションにかけ、売上金を台湾の慈善団体に寄付するというもので、台湾を「第二の故郷」と話す黒木氏の思いがこめられたイベントである。会場には100人以上の来場者がつめかけ、「現代の名工(卓越した技能者)」である黒木氏の技術を観賞した。

 

黒木国昭氏
黒木国昭氏

 

台湾芸術大学蕭銘芚教授は、「学生は普段、実際の制作過程、困難など細かい事を伺う事が出来ない。特に心、(アーティストの)制作時の気持ちは作品の中にこめられているが、(デモンストレーションを通じて)その様な態度や感動を間近に感じる事ができる」と、教育面での効果に期待する。また、台湾のガラス工芸の現状に関して、「まだまだ成長ののびしろがある。台湾の焼き物文化は、歴史があり、従事者も多い。しかしガラス工芸の分野は規模が小さい。だからこそ発展の空間が有ると思っている。」と話し、黒木氏のデモンストレーションを通じて、ガラス工芸への関心を高めたい考えを語った。

 

会場には台湾芸術大の学生を始め、多くの来場者が集まった
会場には台湾芸術大の学生を始め、多くの来場者が集まった

 

午後2時から始まったデモンストレーションでは、大皿の制作が行なわれた。台湾人アシスタントらとともに通訳やジェスチャーを交えての作業であったが、息の合った連携作業によって、ガラスの大きさや形状が目まぐるしく変化し、会場からはその度に驚きの声や歓声が上がっていた。途中、慣れない作業環境の為か、本来使用するはずだったレースガラスのパーツが地面に落下し、使用できなくなると言うハプニングが発生したが、即座に代替パーツを作成し、別の作品に作り替えた。作業開始から二時間かけて大皿が完成した際には、来場者から大きな拍手が贈られた。

 

湿らせた新聞紙を使って形を整える。紙質の良い日本の新聞紙が持ち込まれた
湿らせた新聞紙を使って形を整える。紙質の良い日本の新聞紙が持ち込まれた

 

その後すぐに完成作品のチャリティーオークションが行なわれ、特別価格の5万元(約15万円)から開始された金額は15分で24万元(75万円)に跳ね上がり、最終的に台湾人ガラスアーティストの女性が落札した。この女性は購入の動機を「(同業者として)黒木氏の作品の良さ、特徴をよく理解しているつもりだ」と話し、「どんなに高額になっても入札するつもりだった」、「それだけ価値があるものだった」と語った。

 

大きく膨らんだガラス
大きく膨らんだガラス

 

イベント終了後、黒木氏は「ガラス細工は一呼吸一呼吸が勝負の時だ。一緒に動いているスタッフは将棋の駒と一緒で、先の手を読んで、タイミングを見計らわなければならない」とガラス制作の困難さを語り、台湾の教育現場でデモンストレーションを行なった事に関しては「台湾は成長する場所」、「今日のデモンストレーションのものも、若手の教育に使ってくださいと言う私の願いだ」、「(寄贈作品なども)学生の為に使われるから」と、台湾に対する熱い思いを話した。

 

重く、高温のガラス加工には多くのスタッフを必要とし、息の合ったチームワークが要求される
重く、高温のガラス加工には多くのスタッフを必要とし、息の合ったチームワークが要求される

 

デモンストレーションを観賞した台湾芸術大学の女子学生は「素晴らしかった。見た事がない制作技術を見られて良かった。ただ、(使用できなくなった)レースガラスがどんなものだったのか、凄く興味がある。ちょっと残念。」と、多彩な制作行程を間近に観賞した感想を語ってくれた。

 

黒木氏(中央)とアシスタントスタッフの皆さん
黒木氏(中央)と蕭銘芚教授(右から2番目)、アシスタントスタッフの皆さん