人物インタビュー 台湾漫遊倶楽部 代表 辛正仁さん

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台湾漫遊倶楽部なる任意団体の代表として、台湾在住の旅行作家片倉佳史氏の講演会などをプロデュースする辛正仁さんに台湾との交流、台湾への思いを聞いた。

台湾漫遊倶楽部代表辛正仁さん
台湾漫遊倶楽部代表辛正仁さん

辛正仁さんの両親は台湾人。東京に生まれ育ったが国籍は台湾だ。小学生のときはおっとりしていたというが、中学は軟式テニス部、高校は硬式テニス部で活躍した。その学生時代に芝居の魅力にはまり、やがて演劇部に。卒業後は文学座に所属し、その道を究めことに。

「脚本家を志したんです。俳優の訓練もしましたけど。その時に始めたアルバイトが本職になり、広告代理店でコピーライターとなり、その後、太陽企画という大手CMプロダクションでCMプロデューサーをしていました」。その後の1990年に企画会社を設立し、独立を果たした。「映像プラスイベントという領域の仕事をしてきました。ここ10年ほどは大手衣料品メーカーの社内イベントやコミュニケーションのお手伝いをしています」。

かくして、人生の前半は台湾とのつながりはそれほどでもなかった。「実は、母は12年前に亡くなりました。それまでは台湾との接点は、母が冠婚葬祭などで台湾の親戚を訪ねるときに一緒に行くぐらいでした。しかし、亡くなってみるとこれで接点がなくなると。それは違うのではないかと。仕事で企業文化とかモチベーションの専門家として、何のために働くか、何のために生きるのかを伝える身。自分にとって台湾は大切なテーマだと。それからは無理してでも仕事を台湾でやるようにしました」。

母の名は辛永清さん。テレビ出演も多い著名な料理研究家だった(辛永清著「安閑園の食卓」(集英社文庫)。辛さんは母の死後、疎遠だった父親とも頻繁に会うようになった。

「志としては日台をつなぐ仕事を少しずつやりたいと思いまして、実は、東日本大震災があった年に台湾フェスティバルを企画していました。これが頓挫。疲れてしまって。でも、自分で何かやらねばという気持ちがあり、台湾漫遊倶楽部を立ち上げました」。

この漫遊倶楽部は、現在ツイッターのフォロワーが約2500人いる。昨年から始めた「片倉佳史のもっと台湾トークライブ」は3回目を数えるが、毎回130人のファンで会場はいっぱいだ。こうしたなか、最近、新たな活動を開始した。名称は「日本から台湾の世界遺産登録を応援する会」(代表:ノンフィクション作家平野久美子さん)だ。

「台湾は世界遺産のない国なんです。国として認められておらず、ユネスコに加盟していませんから。なんか変だぞと。烏山頭ダム(うさんとう)も候補になっていて、台湾政府が以前から働きかけているんです。これを日本から応援しようよと。この間、手弁当で取材に行っています」。

日台の賛同者を募り、企業の協賛を仰ぎ、台湾政府の支援を取り付け、といった課題を少しずつクリアしながら春には具体的なアクションを起こしたいと辛さんは語った。

プロフィール

辛正仁(しん まさひと) 昭和31年生まれ。東京都出身。東京農業大学卒。両親は台湾人。自らも国籍は中華民国・台湾。大学時代に演劇に目覚め、卒業後、文学座に所属、俳優&脚本家として活動。その後、コピーライターを経て広告制作プロダクション「太陽企画」に就職。CMプロデューサーとして活躍。1990年に有限会社ジャングルジム設立、イベントプロデューサーに。2011年、漫遊倶楽部立ち上げ、現在に至る。