台湾人「郭茂林」氏設計の「世界貿易センタービル」「霞が関ビル」が解体

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東京タワー展望台より:写真左から2番めが世界貿易センタービル

日本の高度経済成長期の象徴として親しまれてきた「世界貿易センタービル」(地下3階、地上40階)がこのほど、地域の再開発のため解体されることが決まり、6月30日に閉館した。霞が関ビル(36階、147m)に次ぐ日本における2番目の超高層ビルとして1970年(昭和45年)3月に竣工。霞が関ビルとともに鹿島建設によって竣工された。設計は日建設計だった。

この設計に携わったのが、戦前の台湾生まれで日本に帰化した、郭茂林氏の「建築設計事務所・KMG(郭茂林グループ)」であった。KMGは霞が関ビルの設計にも主要な設計業務の統括役として携わり、戦後の象徴とも言える二つの超高層ビルの設計に、一人の元台湾人が関わっていた事は興味深い。

郭茂林氏:2010年8月7日 撮影

郭氏は、日本の統治時代に台湾台北で生まれ、現在の国立台北科技大学を卒業した。学業の成績が優秀だったため、当時の教師に「ここではあなたの才能が活かせないから」との進言を受け、東京帝国大学に入学。建築設計を学び、戦後は日本国籍を取得して日本の建築に多大な貢献をした。

郭氏は2012年、急性腎不全により死去したが、同年10月に郭茂林氏を描いたドキュメンタリー映画「空を拓く~建築家・郭茂林という男」が封切られており、この映画は同年の第25回東京国際映画祭で上映され、好評を博した。