水素による新たな治療法を研究する臨床医などで構成する「国際水素医科学研究会」(赤木純児理事長)は3月5日、東京都文京区の東京大学伊藤謝恩ホールで、「最新水素研究2023」というセミナーを開いた。今回は日台共同開催で、日本の研究者に交じって台湾から長庚大学教授の郭和昌医師、義守大学教授の黄明賢医師が来日して、200人以上のセミナー参加者に向けて研究結果を報告した。
水素は酸素に結びつきやすく、悪玉な活性酸素を除去してストレスを軽減する働きがあるとされる。水素ガスによるがん治療は2016年に理事長である赤木医師によって世界で初めて開始され、同研究会が組織された。2医師などによると、台湾では2020年7月に「分子水素推進協会」が発足。倫理審査委員会の承認を得て肺がん、川崎病、アトピー性皮膚炎、突発性難聴、脳卒中などの10件を超える臨床研究が行われているという。台湾からの参加は昨年に続いて2回目。
郭氏は川崎病の専門医で、同大学の高雄張庚記念病院川崎病センター主任。同病院のHPによると、3000人の川崎病患者を診てきた。郭氏は講演の中で、右冠動脈に動脈瘤ができた10歳の川崎病患者に水素ガス吸入を施したところ、動脈瘤が消えた臨床研究を具体的に説明した。ただ、水素ガス吸入を手掛けた臨床研究数は「ひとけたしかない」として、今後も研究が必要だと語った。
黄氏は義大癌治療病院内科副院長の職にあり、1982-86年に日本の東京医科大に留学経験がある。黄氏によると、台湾では肺がんが死因の一位にあり、毎年1万人以上が亡くなっている。肺がん治療のEGFR標的薬で皮膚炎などが引き起こされ、その痛みから服用をやめてしまう患者がいるとされる。黄医師は、皮膚炎症が認められた27人の肺腺がん患者に1日3時間の水素ガス吸引を行ってもらったところ、皮膚毒性の軽減に有効であり、腎機能の低下などは見られなかった――などと、患者のビフォー、アフタ―の写真を示しながら説明した。やはり郭氏と同じように、今後も多数の患者の結果を分析し、議論する必要があるとした。
台湾からの2医師に続き、赤木理事長など4人の日本人研究者が講演し、パネルディスカッションも行われ、今後も水素研究を進めて行こうと申しわせた。講演を終えた黄氏は「(日本に来てセミナーに参加できて)よかった」などと感想を語った。