「旧日本軍の基地から台湾に帰った人にも立ち寄って欲しい!」と博物館を建設

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福岡県豊前市で4月23日「芙蓉博物館」の竣功式が行われ、同時に「芙蓉・蕭友好博物館5周年音楽会」が開催されて地元・福岡県内や鹿児島県、岐阜県、東京都などから50人を超える人々がお祝いに駆け付けた。

芙蓉博物館は、平和を願う豊前市の渡辺知則歯科医師が、鹿児島県・岩川で特攻を拒否した「芙蓉部隊」に関する資料を展示する目的で、私財を投じ長い準備期間をかけて、この日の開館にこぎ着けたもの。

渡辺医師の主旨に賛同した航空自衛隊岐阜基地からは、海底から引き揚げられたまま保存されていた旧海軍の零式水上偵察機が寄贈され、博物館の目玉として展示されることになった。

寄贈された水上偵察機の前に立つ渡辺医師

戦時中、渡辺医師の父親が芙蓉部隊におり、また祖父母は芙蓉部隊の予科練習生の生活を助けていたという。このことがその後も渡辺医師の脳裏から離れず、これらの人々の労苦を忘れないために博物館の開館を考えたという。書物に残すよりも具体的で、自分自身が長く携われるからだという。

また、渡辺家では終戦で岩川基地から各地に帰郷する人に、道中のお腹の足しにとおにぎりを持たせたそうだが、「台湾は暑い所だろうから」と、台湾に帰る青年には、特別に当時貴重だった梅干しを入れて持たせたとも聞いている。岩川から帰国した台湾の青年にも、この博物館に立ち寄ってもらえれば!との期待も抱いている。

一方、「芙蓉・蕭友好博物館5周年」の蕭博物館では、北九州市で歯科医院を営む庄野庸雄氏が故郷の台湾・屏東で、一家と清朝や日本との関係を展示している (「蕭」は庄野氏の台湾姓)もので、展示品の中には琉球の漁師が殺害されたことに端を発した乃木希典の台湾征討を描いた絵画など貴重な資料もある。

二人の出会いは庄野氏が九州歯科大学で教鞭をとっていた時に渡辺氏の博士論文を指導したことから始まり、今も家族ぐるみの付き合いを続けている。またこれからは両博物館の展示品の交換や相互訪問も考えているという。

2つの博物館の交流を示す看板の前で(左:渡辺氏、右:庄野氏)

このような関係の中で、この日、庄野夫人・宜子さんがピアノ演奏を、芙蓉博物館の名誉相談役で自衛隊出身の平野隆之氏がバイオリン演奏を行い、祝賀に花を添えた。

庄野宜子さん(右上)と平野隆之氏(下)のお祝い演奏