李登輝友の会がセミナー開催 林省吾氏が総統選の展望を語る

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李登輝友の会のセミナーで講演する林省吾氏(中央、座っている)

日台友好団体の「日本李登輝友の会」は4月22日、東京都内で第77回セミナーを開催した。今回は「日本台湾寄進友の会」の林省吾会長が蔡英文総統の対米外交などを踏まえて「外交から見た台湾政治の現状と2024年総統選挙の行方」と題して講演、蔡英文総統の対米外交を解説し、総統選に向けての現時点での見解を語った。

台湾寄進は、台湾で2016年に成立した独立派の政党。国民党と敵対し、民進党に協力的な立場をとる。かつては立法院(国会)に議席を持っていた。前回の20年総統選挙では候補者を出さず、再選を目指す蔡英文氏を支持した。林氏は高雄市出身、成功大学(台南市)卒業、05年から日本を拠点に日台関係などについてのコラム記事を執筆、日台双方に向けて発信している。

蔡総統は今年3月29日から4月7日まで外交部長(外相)などを伴い、外交関係を持つグアテマラ、ベリーズを訪問し、帰途に米国に立ち寄り(トランジット)、米下院議長を会談するなど「民主パートナーとの共栄の旅」と銘打った外交活動を展開した。国民党の馬英九・前総統も同時期に、総統経験者としては初めて中国を訪問。中国は蔡総統の米国訪問前にホンジュラスとの外交関係樹立を発表し、台湾と外交関係を持つ国(正式には中華民国と外交関係)をまた一つ奪い取り、蔡政権に打撃を与えた。総統選を前にして前哨戦が火花をちらしている。

来年の総統選について語る林省吾氏

総統選に向けて各党の候補者選びは、与党・民進党は4月12日に頼清徳・副総統が正式に党公認総統候補に決まった。総統選は総統、副総統の候補者のペアで立候補すると決められており、頼氏がペアを組む副総統候補について林氏は「個人的な見解」とことわったうえで、「(女性の)蕭美琴・駐米大使(駐米台北経済文化代表処代表)が選ばれると思う」と予想した。蕭氏は日本・神戸市出身、蔡総統の側近中の側近とされ、立法委員(国会議員)などを務めてきた。

最大野党・国民党の公認候補選びは、党主席の朱立倫氏、新北市長の侯友宜氏に加え、電子機器グループ「鴻海」の創業者である郭台銘氏が4月5日、国民党から立候補したいと名乗りをあげ、現時点では3氏の争いとなっている。

民進、国民の2大政党の他に、民衆党から柯文哲・前台北市長が立候補を準備している。柯氏は若者に人気が高い。

林氏は野党勢力が民進党に打ち勝つために連携した場合を想定、侯友宜氏と郭台銘氏、柯文哲氏と郭台銘氏など、それぞれが手を結んだ場合の勝利する可能性について言及した。それによると、それぞれ立場が異なるためペア実現の可能性は低いうえ、実現したとしても、どの組み合わせであろうと難しいという。林氏は最後に(世論調査に基づく情勢分析などから)「民進党が勝利する」との予想を示して講演を締めくくった。

日本でも総統選への関心は高く、約40人がセミナーに参加、熱心に耳を傾けた。参加者の男性(50)は「台湾有事が取りざたされている現状では、総統選には無関心ではいられない。講演はとても分かりやすく、現状がよくわかった」などと感想を語った。