子供向け雑誌「王子」などの創刊者で、台湾文学に大きな貢献を果たして日本政府の「旭日双光章」を受賞した蔡焜霖さんが9月3日夜、死去した。92歳。国民党政権において市民の思想や言論を弾圧した「白色テロ」の被害者でもある。
台湾文化部の史哲部長は「台湾国家人権博物館の人権教育を推進し、台湾の若い世代に白色テロの歴史を紹介し、台湾の人権と文化への貢献が大きい」と蔡氏を追悼した。
蔡氏は日本統治時代の1930年、台中州大甲郡清水街生まれ。清水公学校(日本時代の台湾における台湾人の子弟への教育機関)卒業後、台中州立第一中学に入学し、のちに台中県清水鎮役所に入職。50年に読書会に関与し、反政府組織に参加してビラを配ったとして懲役10年、剥奪公権7年の判決を言い渡され、60年まで台湾離島緑島の政治犯刑務所で獄中生活を送った。
出所後に広告や出版業界に身を投じ、66年には獄中で知り合った仲間と雑誌「王子半月刊」を創刊。日本の漫画を参考にした台湾製漫画や小説などを掲載した他、元政治犯を積極的に雇用し、社会復帰を支援した。84年には友人と共同でファッション誌「儂儂」を創刊するなど、出所後40年にわたり、台湾の文化業界で活躍し続けた。
日本政府は2021年春の外国人叙勲で、台湾における日本文化の紹介や相互理解の促進に寄与したとして蔡さんに旭日双光章を授与した。「王子」において、漫画の紹介を通じて日本に関する情報や当時の日本の最先端の画風や作風を台湾に広く伝え、台湾での日本式漫画の発展に大きく貢献した功績がたたえられた。