蔡英文総統は10月10日午前、台湾総統府前で行われた双十節祝賀式典で「自信ある深沈たる態度で国家を前に進める 世界は台湾によってより良くなる」と題する演説を行った。
来年5月に退任する蔡総統にとって最後の双十節演説。蔡総統はまず、3年間を経て遂にマスクが外せたと言及。次いで蔡総統は「わざわざ来られた僑胞(海外台湾人のこと)と国際友人の出席を歓迎する」とし、来場のゲストたちに挨拶した。
蔡総統は「私たちは3年をかけて新型コロナと戦ってきたほか、もう一つ30年もかかった戦がある」とし、台湾の「潜水艦の国産化」計画の完成品として9月に進水式が行われた潜水艦「海鯤号」を言及し「我々が掲げた『国防自主』は確実な一歩を進んだ」と述べ、台湾の自由民主を最後まで守っていく決心を訴えた。
また同性婚合法化や軍公務員の年金改革、最低賃金の調整について、蔡総統は「市民の理解と賛成派、反対派が互いに意見を示したものの、改革がうまく成し遂げたことを改めて感謝したい」とし、任期内の政策を振り返った。
さらに2016年の総統選挙に掲げた「社会住宅20万戸」について、蔡総統は「この目標は24年末に完成できる」とアピールしたほか、この7年間の社会住宅建設が台湾の「居住正義」議題の解決策を称賛し、市民の協力に謝意を示した。
また、台湾内部が与野党を問わず、対外的に団結することを願う考えを示し「台湾の民意の共通認識を基礎とし、対等と尊厳を前提とし、民主主義的対話を過程とし、現状維持を核心として、北京当局と共に双方が受け入れ可能な交流の基礎と平和的共存の道を構築していくことを望む」と述べた。
蔡総統は最後に、自身に2期8年の中華民国総統就任の機会を与えた台湾の人々に感謝を述べた上で「国家はこれからも前進し続けなければならない」と強調。「われわれは世界により素晴らしい台湾を示すだけでなく、民主主義の台湾によって世界をより良いものにしなければならない」と国民を鼓舞した。
なお、今年の国慶節式典の英語表記が「Taiwan National Day」を巡り、馬英九前総統や次期総統選に出馬を表明した郭台銘氏は「台湾は独立国家ではない、あくまで中華民国の国慶節だ」と強く非難し、祝賀式典への出席を拒否した。会場外でも対中融合派団体が抗議活動を展開し、混乱を招いた。