近年、中露首脳会談や米中首脳会談などにおいて、台湾問題は常に重要な議題となっています。とりわけ米中首脳会談(トランプ・習近平会談)を前に、日本政府はさまざまなルートを通じて米国側に台湾海峡の平和と安定の重要性を伝えました。その姿勢からは、日本の台湾に対する強い関心がうかがえます。
日本にとって台湾は、もはや単なる隣国ではありません。安全保障や地域の安定という面でも、運命を共にする大切なパートナーです。
台湾と日本の間には正式な国交はありません。しかし長年にわたり、深い友情と信頼関係が築かれてきました。その多くは公式な外交文書や声明には表れませんが、相互の信頼と暗黙の理解によって支えられています。だからこそ、派手にアピールするのではなく、丁寧に育み続けることが大切なのです。
そして台湾海峡の緊張が高まるたびに、台湾と日本が互いに支え合い、思いを共有する姿を見ることができます。日本に住む台湾出身者として、私はその絆を強く実感しています。
今年5月、私は日本のゴールデンウィークを利用して台湾へ旅行しました。ちょうどその頃、頼清徳総統がさまざまな困難を乗り越えて友好国エスワティニを訪問しており、台湾外交の厳しい現実を改めて感じました。
実際、国交の有無にかかわらず、台湾外交は「できても語れない」という微妙なバランスの上に成り立っています。そして、国交はなくても深い絆を持つ台湾と日本の関係こそ、その象徴と言えるでしょう。

今回の台湾の旅では、長年台湾と日本の交流に尽力してきた先輩方に直接お礼を伝えたいと思い、台湾到着した翌日に台南を訪れ、台湾の最後の「日本語世代」を代表する黄崑虎先生をお訪ねしました。

黄先生は日本政府から旭日小綬章を授与されました。私はその受章をお祝いするとともに、生涯にわたり台湾と日本の民間交流のために尽くし、名誉や見返りを求めることなく歩んでこられた姿勢に深い敬意を抱きました。

また帰国前には、新たに「台湾日本関係協会」の会長に就任された謝長廷氏を訪問しました。謝氏は駐日代表として8年間にわたり台湾と日本の交流を発展させ、「善の循環」と呼ばれる信頼関係を築き上げました。その功績により、日本政府から旭日大綬章を授与されています。
さらに会長就任後の今年3月には、卓榮泰台湾行政院長の東京訪問実現にも尽力したとされ、台湾と日本の断交後における大きな前進として注目されました。その背景には、長年積み重ねられてきた信頼と相互理解があります。
黄崑虎先生は民間交流を支える「民」の象徴であり、謝長廷会長は「できても語れない」外交を担う「官」の象徴と言えるでしょう。
台湾と日本の友情は、官と民の双方が長い年月をかけて築き上げたものです。国交はなくても絆があり、正式な同盟はなくても互いに支え合う関係があります。
しかし一方で、台湾と日本の間には公にしにくい交流や協力も少なくありません(できても語れない交流)。それにもかかわらず、台湾の一部の野党にはそうした敏感な内容を意図的に拡大したり、表面化させようとしたりする動きも見られます。それは台湾と日本の信頼関係を損なう恐れがあり、決して望ましいことではありません。
日本へ戻った今、私は改めて感じています。台湾と日本の間にある「国交はなくても絆がある」という関係は、一朝一夕に築かれたものではありません。官民を問わず、多くの先人たちが長年にわたって積み重ねてきた努力の結晶です。
先人たちが植えた木の木陰で私たちが憩うことができるように、今を生きる私たちもまた、このかけがえのない絆を大切に守り、どのような風雨にも絶やさぬよう次の世代へ引き継いでいかなければなりません。
投書人:大田一博
2026年6月1日
























































