日台漁業取り決めが合意 東シナ海を平和と連携の海に

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交流協会と亜東関係協会は10日、台北賓館(台北市)で、日台民間漁業協議を行ない、「日台漁業取り決め」に合意した。1996年から17年に渡って話し合いが続けられていた日台間の懸案が解決したことで、両国の漁業関係者の利権が明白になったばかりか、尖閣諸島問題で台湾との連携を狙う中国のけん制も期待される。この取り決めでは領有権問題には触れられていない。

 

「日台漁業取り決め水域」台湾外交部提供
「日台漁業取り決め水域」台湾外交部提供

 

今回の取り決めでは、尖閣諸島周辺の排他的経済水域の一部を台湾の漁船が自由に操業できる「法令適用除外水域」と、法令の適用は除外しないものの、両国漁船の操業を最大限尊重する「特別協力水域」の二つの水域が設けられた。そのほか3地点で、台湾側が主張する漁業操業ラインである「暫定執法線」を越えた「法令適用除外水域」が制定され、台湾漁船が操業できる漁場が新たに約4,530平方キロメートル拡大された。

 

交流協会大橋光夫会長、亜東関係協会廖了以会長
交流協会大橋光夫会長(左)、亜東関係協会廖了以会長

 

台湾側の主張が大幅に認められた合意内容に亜東関係協会の廖了以会長は「今後わが国の漁業関係者は関連海域で安心して操業することができ、本当に素晴らしい成果を挙げたと言わざるを得ない」と評価した。また「今日、漁業取り決めに調印することは両国の関係が新たなピークを迎えることを象徴する」とも語り、馬英九政権が掲げる対日関係重視政策にも合致した成果であることを強調した。支持率低迷が続く馬英九政権は、昨年8月に「東シナ海平和イニシアチブ」を提唱し、領有権問題を避け、海洋資源の有効活用を訴えていたこともあり、今回の合意で、長年の問題を解決した実績を残した格好となった。

 

会場となった台北賓館は、元台湾総督官邸
会場となった台北賓館は、元台湾総督官邸

 

また、この取り決めの目的について、交流協会の大橋光夫会長は「東シナ海における平和及び安定を維持し、友好及び互恵協力を推進すること」とし、更に「東シナ海の平和と安定の確保は日本と台湾のみならず、世界に共通する利益である」とも語り、日本と台湾の強固な信頼関係のもとで、民主・自由・平和と言った基本的価値観が一致したことが、漁業協定合意へ至った背景だと語った。

 

林永楽外交部長
林永楽外交部長

 

一方で、この取り決めには尖閣諸島の領有権には触れられていない。双方の漁船の自由な操業を認める「法令適用除外水域」には尖閣諸島周辺12カイリの範囲が含まれておらず、依然として日台双方が領有権を主張している。しかし林永楽外交部長は調印式後の記者会見の中で「合意文書の中には、我々の利益を損なう文言は一切含まれていない」とコメントし、取り決めの合意が領有権問題には影響しないことを強調した。

 

日台間の漁業交渉は1996年から行なわれていたが、尖閣諸島の領有権問題と絡んで双方の合意が得られず、4年前から中断していたが、昨年11月から協議に向けた予備会合が再開された。3月13日に第二回予備会合が行なわれた際には「双方の考えは一致していない」状態であったが、その後14日に林外交部長が「大きな進展があった」、「日本側は善意を示している」と発言し、続く4月2日にも「漁業関係者に影響は与えない」とコメントし、近日中に大きな進展があるものと見られていた。