新生活目前 台湾の賃貸住宅事情

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台湾の教育機関は毎年9月が新学年のスタート。学生が夏休みとなるこの時期は、新しい生活を目前とした引越しシーズンとなっている。しかし、台湾における賃貸住宅の契約環境は、日本とは異なる点が多い。台湾人はどのように部屋を見つけ、契約するのだろうか。

台湾の街角には多くの不動産屋が立ち並んでいるが、それは物件を購入するための仲介だけを手がけるものが多い。賃貸物件となるともっぱら、町内会やインターネット上の掲示板、そして口コミで探すことが一般的だ。この時期の町内会の掲示板には、部屋の種類と、条件、大家の連絡先が書かれた張り紙がずらり張られている。一風変わったところでは、行きつけの個人商店の店主に常連さんで部屋を貸し出している人はいないかと聞き出すこともある。

さて、台湾の賃貸物件には大きく分けて「雅房」と「套房」という部屋のタイプがある。「雅房」とは、トイレ・バス、キッチンなどが他の入居者と共同となっているタイプだ。日本的にいえば、3LDKのマンションを部屋ごとに別の人に貸し出すといった感じであろう。一方の「套房」は、日本のワンルームマンションと同様、部屋とトイレ・バスが独立しているタイプのことだ。台湾の賃貸住宅には机やベッド、クーラー、衣装ダンス、テレビ、冷蔵庫などの家具家電が備え付けの部屋も多い。

ところが、台湾では「間取り図」の概念があまり普及していない。掲示板の情報には「家賃」や「坪数」、「二房一庁一衛(2部屋1リビング1浴室)」などと文字で部屋の情報が書かれている。大家によっては室内の写真が掲載されていることもある。しかし、部屋はどんな形なのか、外窓があるのか、備え付け家具の有無、そもそもその写真が本当にその部屋のものなのかが解らない。わずかな情報を頼りに、おおよその見当をつけたら、掲載されている大家の電話番号に直接連絡をし、部屋を見学させてもらう。そこで実際の部屋と対面することになる。

とは言うものの、不動産屋を仲介しない部屋探しは、部屋見学の時間調整にも手間が必要だ。大家や仲介人の帰宅を待つために、夜遅くに見学ということも。ただ、家賃や敷金をめぐって、大家と直談判できるのは大きな魅力だ。最上階で暑いからといって家賃を下げさせたり、もともとはなかった小型冷蔵庫を大家に備え付けさせた「つわもの」もいる。ただ、見学を通じて大家も入居者を見ているので、過度なわがままは禁物。長く友好的なお付き合いのためには妥協も必要だ。

交渉がまとまれば晴れて契約となる。その多くは半年から一年契約で、交渉によってはそれ以下の期間でも可能。ただ、面白いのは、契約が満了となっても、家賃を毎月きちんと払い続けていれば、契約更新手続きをせずとも、自動的に更新されることが多いところだ。もちろん例外はあるが、最初の契約期間を過ぎれば、いつ退室してもいいのは便利である。

しかし、ここにも落とし穴がある。入居者が退室自由ということは、大家にとっても契約解消が自由ということでもある。実際に「親戚が住みたいといっている」、「家を他人に売却した」など、大家の事情で退去を求められることがある。こういった時に契約更新がなされていないと、入居者は反論の仕様がない。万が一退去が必要となった場合は、もう一度掲示板やネット上の不動産業者で検索することになる。

台湾での部屋探しは時間と根気のいる作業だ。特に猛暑となった今年の台湾では、炎天下の中での部屋探しを余儀なくされる。しかし、それも快適な新生活のため。入居者と大家の関係が近いことは、トラブルの際にも直接交渉することができるため、安全や安心にもつながる。台湾での部屋探しには、独特の文化が形成されている。