シャインハウスシアター演出家 ジョン・ボーユエンに聞く「真夏の奇譚集」

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都内で開催されているフェスティバルトーキョー13(2013年11月9日~12月8日)で台湾の劇団「シャインハウスシアター」が11月29日~12月1日まで来日公演を行った。台湾社会の闇に鋭く切り込む新進気鋭の演出家に話を聞いた。

ジョン・ボーユエンさん
ジョン・ボーユエンさん

Q演劇との出会いは。

A高校時代、ヒップホップやダンスに興味があったが、演劇に触れる機会があってだんだんダンスから演劇に傾倒していった。

Q影響を受けた人は。

A村上春樹の「レキシントンの幽霊」が好きで繰り返し読んだ。人間の内面を細やかに描写しているところが好きだ。彼は早稲田大学の映画演劇科を卒業している。

Q真夏の奇譚集を日本で上演した理由は

A日本のお客様に感じて欲しいという思いがあった。実は今年一部変更した部分がある。2012年の台湾の水害の物語を挿入した。オムニバス形式になっていてお客様が1つ1つゆっくりと受け入れて欲しい。また、日本でも3.11があり、お客様に精神面でのハケ口になってもらえたらと考えた。

Q台湾での反響は。

A台湾でも評判がよかった。怖いけれども非常に感情移入できる、心温まるストーリーが入っていると。人間と幽霊との関係性で人間の内面というものを描いたところに共感してもらえた。

Q演出としてビデオを使っていたが。

A偶然、ふと思いついたもの。映像が空間に散乱して幻想的な効果がでた。

Q決まったテーマがあるのか。

A一貫しているテーマは人間です。最近は台湾社会の下層階級の人たち、娼婦や犯罪者、ホームレスに取材してそうした人たちをテーマに作品を作っています。ただ彼らは生まれた時からそうした人間だったわけではありません。1人の人間だったわけで、僕は演劇を通じてそうした人々を理解するきっかけになればと考えています。

ジョン・ボーユエンさん
ジョン・ボーユエンさん

Q日本をどう思うか。

A今回、初めて日本にきた。日本のテレビ番組をよく見る。ホラーものやロンドンハーツなどの笑い番組。“オタク”のように、とことん追求する内容が多いような気がする。3.11の震災を描いたある作家の本を読んだが、3.11は風化しつつあると書いていた。日本は自殺者も多いと聞く。美しい面、面白い面の裏側にあるマイナス面を隠す傾向があるのかなと思う。

Q中国をどう思うか。

A暴力的というか。僕は現在、ドイツに留学しているが、中国が台湾は中国の一部だということを言うので嫌な感じをもっている。実は最近ある脚本を書いている。6歳の太っていて好きなものが食べられる子どもと痩せていて好きなものが食べられない10歳の子どもが出て来て、6歳が10歳をいじめる話。2人の子どもの話の裏には台湾と中国との関係を意識している。中国が暴力的であるとすれば台湾は中ついて欲しくない。

演劇祭が行われている池袋。文化の街を目指す。
演劇祭が行われている池袋。文化の街を目指す。

●プロフィル

1985年生まれ。国立台北芸術大学で演出を学ぶ。2006年にシャインハウス・シアターを旗揚げし、現在まで20作以上のオリジナル作品を制作。11年に「真夏の奇譚集」が台新芸術賞にノミネートされた。大学講師、脚本家、俳優としても活躍。

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